Case: 飲酒運転~飲酒運転の懲戒解雇の有効性と企業の対策~
(Y社事件・東京地裁平19.8.27 労判945-92)
飲酒運転について
忘年会シーズンでは、お酒を飲む機会も増えると思います。 そこで今回は、お酒に関する問題として飲酒運転を取り上げたいと思います。
まず、飲酒運転の事件ですが、例えば、平成18年8月25日に福岡市東区の海の中道大橋で、福岡市の職員が飲酒運転していた乗用車が、市内在住の会社員の乗用車に追突した事件がありました。その結果、会社員の乗用車が博多湾に転落し、会社員の車に同乗していた3児が死亡しています。
最近でも、大阪市で会社員が車にはねられ、約3キロ引きずられて死亡したひき逃げ事件がありました。犯人は、キャバクラやバーなど3軒ではしご酒をした後、帰宅途中に事件を起こしていたことが警察の調べでわかりました。 こうしたことから、飲酒運転に関する社会的関心が高まっています。
飲酒運転に関する国及び自治体の対応
それでは、実際に、残業指示命令の有無が争われた最近の裁判例をみてみましょう。
平成19年に道路交通法が一部改正され、罰則が強化されました。主な内容として①運転者の罰則強化、②ひき逃げ(救護義務違反)への罰則強化、③運転者以外の周囲の責任を道路交通法で処罰(車両や酒類の提供、車両に同乗)があります。 地方自治体では、飲酒運転した者を原則として懲戒免職とするケースもあります。
飲酒運転が争われた裁判例
次に飲酒運転における懲戒解雇が争われた裁判例をみてみましょう。Y社事件では、セールスドライバーが業務終了後に飲酒運転で検挙されました。この飲酒運転に関する主な内容は以下のとおりです。
【飲酒運転の内容】
- 酒気の程度は主張によれば、缶ビール2本程度で交通事故は起こしていない。
- 酒気帯び運転により、運転免許停止30日間の行政処分を受けたが、講習受講により1日に短縮された。罰金は20万円。
- 会社には上記事実を直ちに報告しなかった。
【会社の対応】
- 就業規則の解雇条文として、「業務内、業務外を問わず飲酒運転及び酒気帯び運転をしたとき」がある。
- 緊急通達で酒気帯び運転等の事後発覚は「情状の処置を行わない」と定めた。
- 運転記録証明の取得により、酒気帯び運転事実が発覚した。
- 懲戒解雇の意思表示をした。
裁判では、懲戒解雇を有効としました。但し、退職金は、功労報償的と賃金後払い的な性格を併有すること等により約962万円の約3分の1の320万円を下らないとしました。 このように、この事件では懲戒解雇を有効としましたが、過去の裁判例をみますと、飲酒運転=懲戒解雇有効ではなく、労働者の職務上の地位や事故の程度等を考慮して、総合的に判断が行われています。
S社事件(最高裁 昭和61.9.11 労判488-11)では、非番日に酒酔い運転で交通事故を発生し、酒酔い運転・安全運転義務違反で罰金刑に処せられた運転手についての懲戒解雇について争われましたが、この事件では懲戒解雇が無効とされました。ここでは、懲戒解雇について以下の判断基準を示しています。
犯罪行為の性質、態様、情状、会社の業種、規模、労働者の会社における職種、地位などを総合勘案し、また、会社による過去の処分事例、他の企業等における同種事犯による処分事例などを比較対照した上、その犯罪行為が会社の社会的評価に及ぼした悪影響、企業秩序に与えた支障の重大性を客観的に判断し、重大性の判断に当たり、会社に与えられた裁量の幅を考慮いれても、なお懲戒解雇を相当とするほどに重大であると認められないときは、その懲戒解雇は無効というべきである。
企業の対策
企業の飲酒運転対策について提案します。参考にして下さい。
- 社内通達による周知徹底:
社内通達で、飲酒運転をした場合は、懲戒解雇を含めた重い懲戒処分を行うことを示し、飲酒運転を抑制します。 - 運転記録証明書による確認:
プラィバシーに関する情報ですので、社員の同意を得ることが必要ですが、運転記録証明書を提出させて、飲酒運転について確認することも考えられます。さすがに同証明書を提出するとなれば、飲酒運転は怖くてできないと思います、 - 誓約書の提出:
安全運転を心掛け、飲酒運転をした場合は、懲戒解雇になっても承諾する旨の誓約書をとれば、飲酒運転に対する「けん制効果」も期待できます。以下は、誓約書の記載例です。
