就業規則本則 解説

前文

経営理念

就業規則に経営理念を記載しておくことが重要である点について説明します。 そもそも、経営理念は就業規則に絶対記載しなければならないかというと、そのようなことはありません。経営理念とは、自社にとって会社経営はこうあるべきだという根本的な考え方です。

したがって、経営理念は労働者の労働条件ではないので、法律上必ず記載するものではなく、記載は任意になります。

では、「わざわざ経営理念を就業規則に書く必要はないよ」と考える事業主様もいらっしゃると思います。それ以前に「経営理念なんてないよ」という方もいらっしゃると思います。

まず経営理念ですが、これは絶対必要なものです。なぜならば、「自社はこうあるべきだ」という根本的な考え方がなくて、経営はうまくいくでしょうか。

理念なき経営を行えば、単に「利益第一主義」になってしまい、なりふり構わなくなり、結果として社会から高い評価を受けなくなるリスクが生じます。経営理念は会社にとってなくてはならないものといえます。

そして、経営理念をきちんと策定し、まずは会社内で共有することが重要です。いくら立派な経営理念をたてても、社員が正反対の行動をしてしまえば、全く意味がありません。社内での共有化は本当に重要です。また、社外のステークホルダー(取引先、株主等)にアピールしていくことが重要です。自社の経営理念に共感してもらえば、取引機会の拡大につながります。

そして、この経営理念を社内へ浸透させる手段として、最も適切なものが就業規則ということになります。

就業規則は、周知義務がありますので、社員全員がきちんと把握しておくものです。きちんと把握することにより、賃金や解雇等のような労使間のトラブルの未然防止につながります。 したがって、就業規則に経営理念を記載しておくことが、最も有効といえます。

さらに、ダメ押しとして、昇格試験に経営理念について出題するとより有効です。問題としては、「当社の経営理念は何か」、「当社の経営理念をあなたはどう捉えているか」等が考えられます。昇格への判断基準とすれば、さらに経営理念について真剣に捉えるようになるでしょう。

優秀な人材の確保の観点からですと、やはり「経営理念」がしっかりしている会社に優秀な人材は集まるといえます。

新聞報道等で企業不祥事がよくとりあげられていることから、社会的にしっかりした会社への就職ニーズはあると思います。このしっかりした会社の一つの判断基準が経営理念になりますので、就業規則の役割が重要といえるでしょう。

総則

目的

目的の記載例は、以下のとおりです。

(目的)
第○条この規則は、○○株式会社の従業員の労働条件、服務規律、その他の就業に関する事項を定めるものである。
2本規則の定めのない事項については、労働基準法その他の関係法令に定めるところによる。

ここで、まず確認したいことは、就業規則は労働条件や服務規律などのさまざまな就業に関する内容を記載していることを明確にしているという点です。

したがって、就業規則をきちんと整備していれば、労使間のトラブルを未然に防止することが可能になります。 なぜならば、「勤務態度が悪いので、懲戒処分にしたい」というケースがあった場合、 自社の服務規律ガイドラインに該当するかどうかをチェックする、という手順にスムーズに移ることが出来るためです。 そして、服務規律に違反するということは、就業規則違反ですから、懲戒処分につながっていくことになります。

今、記載したことは当たり前のように感じると思いますが、単に就業規則を「ひな型」のまる写しをしているような会社では、このような考え方は浮かんでこないと思います。

勤務態度の悪さについて、合理的根拠のないまま懲戒処分をしてしまい、最終的には、使用者の主観的な判断で懲戒処分が行われることもありえます。場当たり的ですと、仮に 数年後に異なる従業員が同じことをしても、処分の内容が異なることも考えられます。

これでは、労使トラブルが発生してしまいます。そして、会社の信用が低下してしまい、人材の確保・定着も難しくなります。

就業規則の目的というのは、そういう意味で就業規則の重要性を謳ったものですので、きちんと記載しておくべきです。

次に、「本規則の定めのない事項は、法令で定めるところによる」の一文も重要です。

法令の内容も含めて、できるだけ詳細に記載しておく必要があります。例えば、有給休暇ですと労働基準法では6か月勤務していれば10日付与されます。仮にこの法令のとおりに実施する場合でも、きちんと記載しておいた方が、労使双方が間違った理解をしたことにより、法令に違反するような行為をすることが防止できますので、有効です。

そうはいっても、就業規則に記載外の思いがけないことが起こった場合もありえます。そのためのリスク・ヘッジになります。

法令は就業規則より優先しますので、改めて記載しなくても良いのでないかという考えもありますが、従業員の認識を促すことにもなりますので、記載をしておいた方がよいといえるでしょう。

適用範囲

就業規則の総則における「適用範囲」について説明します。まず、記載例は以下のとおりです。

(適用範囲)
第○条この規則は、第○章で定める手続きにより採用された従業員について適用する。契約従業員、パートタイム従業員または臨時従業員の就業に関しては、別に定める規則による。

この他にも、例えば定年後に再雇用する者を「嘱託」として定義する場合もあります。

さて、正社員とパート従業員とでは、労働条件に違いがあるケースがあります。 例えば、賃金:正社員(月給)、パート従業員(時給)、労働時間:正社員(8時間)、パート従業員(6時間等の短時間)といった内容があげられます。

このように労働条件に違いがあるケースがありますので、従業員に誤解が生じないように配慮し、就業規則については正社員のみ適用することとし、パート従業員には、パートタイマー就業規則を適用するというように明確に分けておくことが有効になります。

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