就業規則本則 解説

安全衛生

健康診断

安全衛生における健康診断について説明します。 まず、就業規則の記載例はこのような感じです。

(健康診断)
第○条従業員は、入社時および毎年1回以上の健康診断を行う。
2前項に定める場合のほか、法令の定めるところにしたがって必要な健康診断を 実施する。
3健康診断の結果、特に必要のある場合は、就業を一定の期間禁止し、または職場を配置換えすることがある。

労働安全衛生法は、常時使用する労働者について、毎年定期的に健康診断を実施すべきことを義務付けています。 その一方で、労働者については、事業主の行う健康診断を受けなければならないとされ、その受診義務を定めています。ただ、労働者の受診義務についての罰則はありませんが、事業主は罰則があ ります。 健康診断で注意しておきたいことは、健康診断結果を個人情報の1つとして適切に取り扱うことです。労働安全衛生法でも「健康診断の実施の事務に従事した者は、その実施に関して知り得た労働者の心身の欠陥その他の秘密を漏らしてはならない。」と定めているので注意が必要です。

また、健康診断で異常な結果が出ましたら、事業主には安全配慮義務がありますので、職場の配置転換など適切に対応していくことが求められるでしょう。 一歩、踏み込んで健康相談窓口を設置しても良いと思います。優秀な人材の 確保・定着の観点からも労働者の健康に積極的に取り組んでいる企業は、高く評価されることになるでしょう。

安全配慮義務

わが国では、労働者災害補償保険法(いわゆる労災)があり、労働災害が発生した場合は、国によって補填される仕組みとなっています。 したがって、何かあれば労災で対応するから、特に気にしなくていいと思うかもしれません。しかしながら、こうした労働災害について、安全配慮義務がなされていないという理由で訴訟が発生することがあり、損害賠償額も多額になるケースがあります。

そもそも安全配慮義務とは、「労働契約上、使用者が労働者に負う義務は、労働者の労務の提供に対する対価の支払いのみならず、労務提供に際し、労働者の身体・生命に生じる危険から労働者を保護する義務も含まれる。そのためには、職場環境の安全も図らなくてはならない」というものです。 そして、この安全配慮義務を履行していることを事業主が立証するには、安全衛生管理に関する規定を策定・周知し、災害の発生が予見できる場合は、適切に危険防止措置を行う必要があるということです。 この安全配慮義務で思い浮かぶのは、機械や設備管理面の不十分さが問題になる場合です。

例えば、こういうケースが争われ、企業の安全配慮義務についての問題が指摘されました。
・ヘリコプターの墜落事故において、機体整備が不十分
・宿直中の労働者が、強盗に刺殺された事件において、強盗進入防止の措置が不十分

上記の中でヘリコプターのケースは、結果的には、整備過程で欠陥を発見するのは困難な事情があったとして企業の安全配慮義務違反にはなりませんでした。一方、宿直中のケースは安全配慮義務違反があったと認定されました。 このように、安全配慮義務になるか否かは、個別具体的に判断されることになりますが、機械や設備管理面が不十分であると、安全配慮義務違反が問われる可能性があることは認識しておく必要があります。

そして、この安全配慮義務については、さらに長時間労働による問題にまで発展しています。これに関しては、有名な電通事件(最高裁平12.3.24)があります。以下に、判決の中から重要箇所を一部抜き出して、まとめました。

判例:電通事件 使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと解する のが相当であり、使用者に代わって労働者に対して業務上の指揮監督を行う権限を有するものは、使用者の注意義務の内容にしたがって、その権限を行使すべきである。
電通事件(最高裁平12.3.24)

この事件は、長時間労働に従事する労働者がうつ病に罹患して自殺したケースです。会社の安全配慮義務違反が認められました。 これは、画期的な判決であると同時に、企業の安全配慮義務がとても重視された事件といえます。

現在、人材不足の企業が多いと思います。しかし、特定の社員に業務が集中し、長時間労働となり健康状態を損なわせたりすると、こうした問題がでてくるリスクがあります。 十分に注意する必要があるでしょう。

安全衛生管理体制

まず、労働安全衛生法においては、規模や業種によって、様々な管理者を選任することを求めています。主なものについて簡単に概要を示します。

◆総括安全衛生管理者:
安全衛生の統括管理をする者です。業種によって選任義務となる労働者数は分かれており、例えば建設業等の屋外産業的業種は常時100人以上いる場合が選任義務となります。
◆安全管理者:
安全に関する技術的事項を管理するものです。全ての業種が対象ではなく、建設業や製造業など屋外や工業的な業種が主に対象となり、常時50人以上の労働者がいる場合は選任義務があります。
◆衛生管理者:
衛生における技術的事項を管理するものです。全業種が対象となり、常時50人以上の労働者がいる場合は選任義務があります。
◆産業医:
労働者の健康管理を医学的な面から行うものです。全業種が対象となり、常時50人以上の労働者がいる場合は選任義務があります。

この他にも、小規模な事業場では、安全管理者や衛生管理者に代わって安全衛生推進者を選任したりします。 このように労働安全衛生法では、様々な管理者を選任することを求めており、正直、企業では大変だと思います。しかしながら、法で義務付けている以上は、該当する場合は選任する義務があります。 特に衛生管理者は、全業種が対象ですので、50人以上の企業は、選任していなければ、速やかに選任を検討しなくてはなりません。

そして、これらの内容は安全衛生管理の中に規定しておきます。例えば、衛生管理者では、毎週1回作業上の巡視することが義務付けられています。こうしたことも規定で明確にしておくとよいでしょう。

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