高年齢者雇用

高年齢者雇用を取り巻く状況

日本の人口の推移

近年は、日本の人口は減少傾向にあります。2018年の人口は約12,644万人でしたが、2065年には9,000万人を割り込むことが予想されています。

こうした中、生産年齢(15~64歳)人口割合も低下傾向にあり、2018年では59.7%だったのが、2065年には51.4%となることが予想されています。

一方で、高齢化率(65歳以上の人口の割合)は、拡大傾向にあります。高齢化率は、2018年では28.1%でしたが、2065年には38.4%に上昇すると予想されています。

このように、少子高齢化により人口が減少する一方で、高年齢者の割合は増加する傾向にあるのが、わが国の現状です。

労働力人口の推移

労働力人口に占める「65歳以上の構成比」をみると、1970年代以降、上昇傾向にあります。1970年では4.5%だったのが、2018年には12.8%と、約50年の間に、3倍近くになっています。

また、「65歳以上の労働力人口そのもの」も上昇し続けており、2018年には875万人となっています。

このように、65歳以降も働き続けている人が多く、その数はさらに年々増加していることが分かります。

少子高齢化により、今後も同様の傾向が続くことが予想されます。労働力不足を補うには、AIやロボットの活用に加えて、高齢者の活躍も欠かせないといえます。

65歳までの雇用確保措置

高年齢者雇用確保措置とは

定年を65歳未満に定めている事業主は、以下のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じる必要があります。

●65歳まで定年年齢を引き上げ
●65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)を導入
●定年制の廃止

勧告及び公表

高年齢者雇用確保措置の実施に係る指導を、繰り返し受けたにもかかわらず、何も具体的な取り組みを行わない場合は、勧告書が発出されます。

この勧告に従わない場合においては、企業名が公表されることがあります。

65歳までの雇用確保措置の履行時における留意点

無期転換制度と継続雇用の高齢者の特例

無期転換制度とは、「有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できる」という制度です。

通常は、定年後、引き続き雇用される定年後再雇用の有期雇用労働者についても、有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときは、定年後再雇用の有期雇用労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換することになります。

ただし、有期雇用特別措置法により、「適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けた事業主の下で、定年後、継続雇用している有期雇用労働者については、無期転換申込権が発生しない」とする特例が設けられています。

同一労働同一賃金

「正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)」と「非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)」の間の不合理な待遇差の解消を目指すものとして、パートタイム・有期雇用労働法が、2020年4月1日から施行されています。中小企業については2021年4月1日より施行されます。

定年後再雇用により有期雇用となった場合、新しい雇用形態になるとともに、賃金については正社員の当時と比較して、大きく引き下がる場合があります。

この場合、例えば、同じ業務で同じ労働時間仕事をしており、責任の度合いや配置の変更も正社員と同様とした場合は、定年後再雇用社員にも「同一労働同一賃金の原則」が当てはまります。

その場合、”賃金水準の大きな引き下げ”が問題になることが懸念されます。

したがって、定年後再雇用者については、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲、その他の事情を考慮して、適切に待遇を検討しておく必要があります。

70歳までの就業確保

高年齢者就業確保措置の新設(令和3年4月施行)

事業主に対して、65歳から70歳までの就業機会を確保することから、高年齢者就業確保措置として、以下の1~5のいずれかの措置を講ずる努力義務が設けられました。

1. 70歳までの定年引上げ

2. 70歳までの継続雇用制度の導入
※特殊関係事業主(子会社・関連会社等)に加えて、他の事業主に雇用される場合を含む

3. 定年廃止

4. 高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入

5. 高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に「事業主が自ら実施する社会貢献事業」、「事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業」に従事できる制度の導入

対象者基準

高年齢者就業確保措置は努力義務のため、企業では、対象者を限定する基準を設けることが可能です(70歳までの定年引き上げ、定年廃止を除きます)。

ただし、対象者基準を設ける場合は、次の事項に留意する必要があります。

[留意点1]
対象者基準の内容は、原則として労使に委ねられるものですが、事業主と過半数労働組合等との間で十分に協議した上で、過半数労働組合等の同意を得ることが望ましいとされています。

[留意点2]
事業主が恣意的に高年齢者を排除しようとするなど法の趣旨や、他の労働関係法令・公序良俗に反するものは認められません。

<不適切な例>
●会社が必要と認めた者に限る・・・ 一見、問題なさそうですが、基準がないことと等しく、改正の趣旨に反します。
●男性(女性)に限る    ・・・ 男女差別に該当します。
●組合活動に従事していない者に限る・・・不当労働行為に該当します。

創業支援等措置

創業支援等措置とは、以下の措置を指します。

●高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
●高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に「事業主が自ら実施する社会貢献事業」、「事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業」に従事できる制度の導入

そして、創業支援等措置を実施する場合には、以下の手続きを行う必要があります。

計画の作成

下記の事項を記載した計画を、作成する必要があります。
●高年齢者就業確保措置のうち、創業支援等措置を講ずる理由
●高年齢者が従事する業務の内容に関する事項
●高年齢者に支払う金銭に関する事項
●契約を締結する頻度に関する事項
●契約に係る納品に関する事項
●契約の変更に関する事項
●契約の終了に関する事項(契約の解除事由を含む)
●諸経費の取り扱いに関する事項
●安全および衛生に関する事項
●災害補償および業務外の傷病扶助に関する事項
●社会貢献事業を実施する団体に関する事項
●上記のほか、創業支援等措置の対象となる労働者の全てに適用される事項

過半数労働組合等の同意

これらの計画について、「過半数労働組合等(労働者の過半数を代表する労働組合がある場合にはその労働組合、そして労働者の過半数を代表する労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者)」の同意を得る必要があります。

計画の周知

同意を得たならば、その計画につき、労働者に周知する必要があります。

契約の締結時

高年齢者と業務委託契約等を締結する場合には、以下の事項について、留意する必要があります。

●契約は書面で締結すること
●契約を締結する高年齢者に前述の計画を記載した書面を交付すること
●以下の内容を十分に説明し、納得を得る努力をすること
・労働基準法等の労働関係法令が適用されない働き方であること
・そのために前述の計画を定めること
・創業支援等措置を選択する理由

安全衛生

創業支援等措置により就業する高年齢者が、委託業務等に起因する事故等により被災したことを事業主が把握した場合には、主たる事務所を所管するハローワークに報告することが望ましいとされています。

相談対応

契約に基づく業務に関して、高年齢者から相談があった場合には、誠実に対応する必要があります。

契約の継続

心身の故障のため業務に堪えられないと認められない等、実施計画に定める契約を更新しない事由に該当し、契約を継続しない場合は、事前に適切な予告を行うことが望ましいとされています。

高年齢者雇用に関する主な制度

雇用保険

高年齢者雇用継続給付

高年齢雇用継続給付には、「高年齢雇用継続基本給付金」と、基本手当を受給して60歳以後再就職した場合に支払われる「高年齢再就職給付金」があります。

雇用保険の被保険者であった期間が5年以上ある、60歳以上65歳未満の一般被保険者について支給されます。

原則として、60歳以降の賃金が60歳時点に比べて、75%未満に低下した状態で働き続ける場合に支給されます。

なお、高年齢雇用継続給付は、令和7年度から段階的に縮小されることになっています。

65歳以上複数就業者の雇用保険特例加入(令和4年1月施行)

65歳以上で2箇所以上の複数事業場で就労する者で、次のいずれにも該当するときは、その者が申し出ることにより、高年齢被保険者となることができます。

●2以上の事業主の適用事業所に雇用されるとき
●一つの事業主の適用事業所における1週間の所定労働時間が20時間未満であるとき
●二つの事業主の適用事業における1週間の所定労働時間の合計が20時間以上であること

社会保険

在職老齢年金

在職老齢年金とは、「70歳未満の社員が会社の厚生年金保険に加入した場合」や、「70歳以上の社員が厚生年金保険の適用事業所に勤務している場合」に、老齢厚生年金の額、給与や賞与の額(総報酬月額相当額)に応じて、年金の一部または全額を支給停止とする制度です。

受取開始時の年齢が、60歳代前半と、65歳以降の場合とでは、計算の仕組みが異なります。また、雇用保険の「高年齢雇用継続給付」を受けると、年金額の一部が支給停止されるので注意が必要です。

令和4年度から、60歳代前半の在職老齢年金について、年金が支給停止される基準が、現行の賃金と年金月額の合計額「28万円」から「47万円」に大幅緩和され、対象者の範囲が広がることとなります。

在職定時改定

現在は、老齢厚生年金の受給権の取得後に、厚生年金保険に継続加入している場合、退職等により資格を喪失した時に、受給権の取得後の被保険者期間を加えて、老齢厚生年金の額が改定される仕組みです。

令和4年度からは、高齢期の就労継続の状況を早期に年金額に反映するため、65歳以上の在職中の老齢厚生年金受給者について、年金額を毎年10月に改定し、それまでに納めた保険料を年金額に反映することとしています。

就業規則規定例

※参考:厚生労働省「高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者就業確保措置関係)」

定年を満60歳とし、その後希望者を継続雇用する例(満65歳以降は対象者基準あり)
第〇条 (定年等)
労働者の定年は、満60歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする。
  2 前項の規定にかかわらず、定年後も引き続き雇用されることを希望し、解雇事由又は退職事由に該当しない労働者については、満65歳までこれを継続雇用する。
  3 前項の規定に基づく継続雇用の満了後に、引き続き雇用されることを希望し、解雇事由又は退職事由に該当しない労働者のうち、次の各号に掲げる基準のいずれにも該当する者については、満70歳までこれを継続雇用する。
(1)過去○年間の人事考課が、○以上である者
(2)過去○年間の出勤率が、○%以上である者
(3)過去○年間の定期健康診断結果を産業医が判断し、業務上、支障がないと認められた者
定年を満65歳とし、その後希望者全員を継続雇用する例
第〇条 (定年等)
労働者の定年は、満65歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする。
  2 前項の規定にかかわらず、定年後も引き続き雇用されることを希望し、解雇事由又は退職事由に該当しない労働者については、満70歳までこれを継続雇用する。
定年を満65歳とし、その後希望者の意向を踏まえて継続雇用または業務委託契約を締結する例(ともに対象者基準あり)
第〇条 (定年等)
労働者の定年は、満65歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする。
  2 前項の規定にかかわらず、定年後も引き続き雇用されることを希望し、解雇事由又は退職事由に該当しない労働者のうち、次の各号に掲げる基準のいずれにも該当する者については、満70歳までこれを継続雇用する。
(1)過去○年間の人事考課が、○以上である者
(2)過去○年間の出勤率が、○%以上である者
(3)過去○年間の定期健康診断結果を産業医が判断し、業務上、支障がないと認められた者
  3 第1項の規定にかかわらず、定年後に業務委託契約を締結することを希望し、解雇事由又は退職事由に該当しない者のうち、次の各号に掲げる業務について、業務ごとに定める基準のいずれにも該当する者については、満70歳までこれと業務委託契約を継続的に締結する。なお、当該契約に基づく各業務内容等については、別途定める創業支援等措置の実施に関する計画に定めるところによるものとする。
(1)○○業務においては、次のいずれの基準にも該当する者
ア 過去○年間の人事考課が、○以上である者
イ 当該業務に必要な、○○の資格を有している者
(2)△△業務においては、次のいずれの基準にも該当する者
ア 過去○年間の人事考課が、○以上である者
イ 定年前に当該業務に○年以上従事した経験及び当該業務を遂行する能力があるとして、以下に該当する者
1. ○○○○
2. ○○○○