フレックスタイム制とは
フレックスタイム制の特徴
通常の労働時間制度では、労働者はあらかじめ定められた始業・終業時刻に基づき、勤務することが求められています。
一方、フレックスタイム制とは、あらかじめ定めた「総労働時間の範囲内」で、労働者が自ら、日々の始業・終業時刻及び労働時間を決められることを特徴とする制度です。
必ず勤務しなければならない時間帯を、「コアタイム」、コアタイム以外に出社または退社可能な時間帯を、「フレキシブルタイム」として、定めることができます。
なお、コアタイムやフレキシブルタイムは、必ずしも設けなければならないとうことではありません。
フレックスタイム制利用者の声
※厚生労働省「フレックスタイム制の わかりやすい解説&導入の手引き」より
●共働きで子育てをする夫婦の場合:”我が家では夫婦ともにフレックスタイム制を活用して、保育園の送り迎えを日替わりで分担しています。”
●資格取得を目指して頑張っている人の場合:”毎週、月・水・金は資格取得のために社会人大学に通うため、早く帰っています。その分、火・木は多めに働いて、取り返しています。”
●通勤ラッシュが苦痛な人の場合:”私は出勤時間を遅らせて、時差通勤しています。予定があって早く帰りたい日には、通勤ラッシュより前に出勤しています。”
フレックスタイム制の導入手続き(労使協定)
フレックスタイムを導入するには、労使協定で所定の事項を定めることが必要になります。
また、就業規則においても、「始業・終業時刻を労働者の決定に委ねる」旨などを、規定することになります。
労使協定では、次の事項を定める必要があります。
対象となる労働者の範囲
「全従業員」、「〇〇部に所属する社員」のように、対象となる労働者の範囲を自由に定めることができます。
労使でしっかり話し合った上で、範囲を明確にする必要があります。
清算期間
フレックスタイム制において、「労働者が労働すべき時間を定める期間」のことを意味します。
清算期間を定める際は、清算期間の起算日(例:毎月1日)を決めておく必要があります。
なお、労働基準法の改正によって、清算期間の上限が「1か月以内」から「3か月以内」に変更されましたが、多くの企業はそのまま1か月として対応しているケースが多いのが実状です。
清算期間における総労働時間
清算期間における総労働時間とは、「労働者の勤務が義務付けられている所定労働時間」になります。
月単位を清算期間とした際、清算期間における総労働時間を定めるに当たっては、次のとおり法定労働時間の総枠の範囲内とする必要があります。
[清算期間の暦日数] [1か月の法定労働時間の総枠]
31日: 177.1時間
30日: 171.4時間
29日: 165.7時間
28日: 160.0時間
コアタイム(任意)
コアタイムは、「労働者が1日のうちで必ず働くことが義務付けられている時間帯」です。
コアタイムを設ける場合は、その時間帯の開始・終了の時刻を協定で定める必要があります。
フレキシブルタイム(任意)
フレキシブルタイムは、「労働者が自らの選択によって労働時間を決定できる時間帯」です。
フレキシブルタイムを設ける場合においても、その時間帯の開始・終了の時刻を協定で定める必要があります。
なお、フレキシブルタイムの時間帯が極端に短い場合や、コアタイムの時間が1日の所定労働時間と同程度のような設定をした場合、結果的に労働者が始業・終業時刻を自由に決定できなくなってしまいます。
その結果、フレックス制の趣旨に反することになり、フレックスタイム制とはいえなくなるため、注意が必要です。
フレックスタイム制の導入手続き(就業規則)
規定例は、以下の通りです。
規定例
| 第〇条 | 第○条の規定にかかわらず、〇〇部に所属する従業員に、フレックスタイム制を適用するものとする。 |
| 2 | フレックスタイム制の清算期間は1か月間とし、毎月1日を起算日とする。 |
| 3 | 標準となる1日の労働時間は、8時間とする。 |
| 4 | 清算期間の所定勤務時間数は、次の算式によって得られる時間とする。 [8時間 × 清算期間の所定勤務日数] |
| 5 | フレックスタイム制が適用される従業員の始業および終業の時刻については、従業員の自主的決定に委ねるものとする。ただし、従業員の自主的決定に委ねる時間帯(フレキシブルタイム)は、始業時刻につき午前7時から午前10時まで、終業時刻につき午後3時から午後7時までの間とする。 |
| 6 | 午前10時から午後3時までの間(正午から午後1時までの休憩時間を除く)については、所定の労働に従事しなければならない時間帯(コアタイム)とする。 |
| 7 | 前各項に定める事項以外については、労使協定に定めるところによる。 |
時間外労働の清算手続き
フレックスタイム制では、始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねている一方で、使用者は、労働者の実労働時間を把握し、管理する義務があります。
そして、労働者の実労働時間と総労働時間を比較して、賃金清算を行うことになります。
仮に、労働者に時間外労働が発生していた場合、その分の手当(時間外労働手当)を支払うことになります。
清算手続き例
例えば、次の内容で、時間外労働における清算手続きを考えてみましょう。
●6月の清算期間における、総労働時間:160時間、実労働時間:209時間
●6月の法定労働時間の総枠: 171.4 時間
この場合、実労働時間が総労働時間を上回っているため、時間外労働手当を支給する必要があります。
この、時間外労働手当の計算に際しては、次の2点を考慮します。
法定労働時間の総枠を超えた時間数について
実労働時間(209時間)から法定労働時間の総枠(171.4時間)を差し引いた、37.6時間(37時間36分)については、2割5分以上の率の割増賃金の支払いが義務付けられます。
法定労働時間の総枠内の時間数について
法定労働時間の総枠(171.4時間)から総労働時間(160時間)を差し引いた11.4時間(11時間24分)については、通常の賃金相当額(割増不要)を支払うことになります。
しかしながら実務的には、計算の簡便上、あえて法定労働時間の総枠を考慮せず、実労働時間が総労働時間を上回った時間数(上記例では、209時間―160時間=49時間)につき、2割5分の率で割増賃金を計算して支給する場合もあります。
休憩
フレックスタイムにおける休憩については、行政通達で次のように定めています。
「労働基準法の規定どおりに与えなければならない。一斉休憩が必要な場合には、コアタイム中に休憩時間を定めるよう指導すること。一斉休憩が必要ない事業において、休憩時間をとる時間帯を労働者にゆだねる場合には、各日の休憩時間の長さを定め、それをとる時間帯は労働者にゆだねる旨記載しておけばよい。」(昭和63年3月14日 基発150号、婦発47号)
休憩時間については一斉付与が原則になるので、上記通達で示すとおり、コアタイム中に休憩時間(例:正午~午後1時)を定めることが、最もシンプルな対応です。
ただし、労使協定を締結することにより、休憩時間を一斉付与しない対応も可能です。このような場合は、就業規則で、フレックス対象者については、その日の労働時間に応じて対応することが考えられます。
休憩時間の長さについては、労働基準法で次のとおり定められています。こうした点も、考慮しておくとよいでしょう。
[労働時間] [休憩時間]
6時間以下 ⇒ 不要
6時間超8時間以下 ⇒ 45分
8時間超 ⇒ 60分
会議の出席
まず、フレックスタイム制は、あくまでも始業および終業の時刻を労働者の決定に委ねることを特徴としています。
そして、出退社自由な時間帯として、フレキシブルタイムを設けることがあります。
しかし、このフレキシブルタイムの時間帯に、例えば、「〇時に出社しなさい」といった命令は基本的にできません。
従って、例えば、朝9時から10時まで会議を開催する場合、その時間帯がフレキシブルタイムであれば、原則として、フレックス対象者に会議の出席を強要することはできないことになります。
このように、フレックスタイム制では、会社が、特定の時刻にフレックス対象者に出社することを命令できませんが、ただ会議という事情を説明して、会議の時間帯に出社を依頼することは可能です。
ただ、あくまでも依頼に基づく対応ですので、仮に出社を拒否したとしても、それを理由に懲戒処分を行うことはできませんので、この点は注意が必要です。
欠勤の対応
フレックスタイム制において、労働者が自主的に決定できるのは、あくまでも”始業および終業の時刻”になります。
従って、所定労働日について出勤の有無を決める権利は、労働者にはないため、勝手に欠勤した場合は、コアタイムの有無に関わらず、「欠勤」として取り扱うことになります。
その結果、人事評価や賞与査定において、マイナス評価の対象とするなどの対応が考えられます。
ただし、賃金カットについては、慎重な対応が必要になります。
フレックスタイム制では、清算期間内の総労働時間において、欠勤に相当する時間が不足していれば、賃金カットは可能です。
しかしながら、他の日に多く労働したことにより、清算期間の総労働時間において不足が生じていなければ、賃金のカットはできないことになります。
総労働時間について、適切に管理しておきましょう。
有給休暇
まず、フレックスタイム制の対象労働者が、年次有給休暇を1日取得した場合ですが、その日については、標準となる1日の労働時間を労働したものとして取り扱うことになります。
また、フレックスタイム制における、半日単位の年次有給休暇の取得も対応が可能です。
この場合においては、通常の労働時間制度と同様に、就業規則において午前半日、午後半日にそれぞれ勤務時間帯を明確にしておくことになります。
残業規制
フレックスタイム制で働く労働者についても、時間外労働を行う場合は、36協定(時間外・休日労働に関する協定)の締結及び労働基準監督署への届出が必要になります。
そして、フレックスタイム制で働く労働者についても、通常の労働者と同様、一部の業種を除いて次のとおり上限規制が設けられています。
[1]原則
時間外労働の上限(限度時間)月45時間以内 年360時間以内
[2]特別条項(臨時的な特別の事情がある場合に限るもの)であり、
限度時間を超えることができる場合
●特別条項の回数・・・ 年6回以内
●年間の時間外労働の上限・・・ 年720時間以内
●時間外労働と休日労働の合計・・・ 単月100時間未満、2~6か月平均80時間以内
労働者がこうした上限規制を超過して勤務することがないように、会社が労働者の勤務状況を適切に管理し、労働時間の短縮化を図ることを通じて残業を規制することは有効です。
ただし、フレックスタイム制の場合は、日々の始業・終業時刻につき、フレックス適用の労働者が自主的に決定するため、日々の労働時間を会社が指定することはできない面があります。
一方で、フレックスタイム制の時間外労働は、清算期間における法定労働時間の総枠を超える場合となります。
従って、「日々の始業・終業時刻をフレックス適用者が決める」という理由で、会社側が特に何もせず放置してしまえば、清算期間の終わりになって、いつのまにか36協定の限度時間を超過していた、という問題が生じるリスクがあります。
こうしたことから、例えば、清算期間の途中において、労働時間数が一定の基準を超過した時点でアラートを出したり、既に法定労働時間の総枠を超えている場合の残業は、所属長の事前承認を義務付ける、といった対応が考えられます。








