
【概要】
ある美容室チェーンでは、「休眠美容師 再チャレンジ制度」を実施しています。具体的には、次の内容が特徴的です。
1.休眠美容師とは、一度、美容師を離れた人です。 この会社では、休眠美容師の活躍にも取り組んでいます。
2.施術メニューについては、カットとカラーに絞っています。
カットとカラーは、比較的流行に左右されにくい面があります。そのため、トレンドの髪型を把握していなくても、安心して復帰することにつながります。
【意見・感想・解説】
今回は、「休眠美容師 再チャレンジ制度」を取り上げました。
美容師資格や現場経験を持ちながら、結婚、出産、育児、介護などの理由で離職している人は多いと思われます。
こうした休眠美容師に再挑戦の機会を設けることは、人材確保そして社会的意義の面で評価できます。
そもそも、新たに未経験者を一から育成するよりは、一定の基礎を有している人材の復帰を支援する方が、企業および本人にとって合理的です。
施術メニューをカットとカラーに絞っている点も、いいですね。
現場を長い間離れていた人にとって、復帰時の不安は、「技術についていけるか」「流行の変化に対応できるか」などが考えられます。
その点、この制度では業務範囲を絞ることで、心理的負担を下げているため、復帰のハードルを下げています。
このような工夫・ポイントも、とても参考になる事例です。
今回の事例を踏まえ、会社(社長)から社員へのメッセージおよび規程例を作成しました。ご参考ください。
会社から社員へのメッセージ例
社員の皆様へ
いつもそれぞれの持ち場で力を尽くし、お客様に安心と満足を届けてくださっていることに、心より感謝申し上げます。
会社は、今働いてくださっている社員の皆様一人ひとりを、何より大切な存在だと考えています。日々の努力や仲間への思いやり、現場を支える責任感があるからこそ、今の会社があります。皆様が支えてくださっているこの職場を、これからも安心して長く働ける場所にしていくことが、会社の大切な使命です。
このたび当社では、「休眠美容師 再チャレンジ制度」を通じて、新たに仲間を迎えていきます。一度現場を離れた方々の中には、結婚、出産、育児、介護など、さまざまな事情を経て、もう一度美容師として働きたいという思いを持っている方がいます。その想いに応え、再び活躍できる場をつくることは、会社として大変意義のある取り組みだと考えています。
そして何より、こうした新しい仲間を温かく迎えていただきたいのは、今いる社員の皆様です。久しぶりの現場復帰には、不安や緊張が伴うこともあるはずです。技術面への心配、職場の流れに慣れるまでの戸惑い、自分に務まるだろうかという迷いを抱えている方も少なくありません。だからこそ、皆様の声かけや思いやり、自然な支えが、新たに加わる仲間にとって大きな安心につながります。
当社では、復帰しやすいよう施術メニューをカットとカラーに絞り、無理のない形で再スタートできる環境を整えています。しかし、制度や仕組みだけで本当の安心が生まれるわけではありません。職場のあたたかな雰囲気、受け入れる側の配慮、仲間として支え合う姿勢があってこそ、安心して働ける環境がつくられていきます。
新しく加わる休眠美容師の方々も、これまでに経験と努力を積み重ねてこられた大切な仲間です。少し現場を離れていた期間があったとしても、その経験や資格、仕事への思いは、会社にとってかけがえのない財産です。皆様にはぜひ、その方々を同じ仲間として温かく迎え入れ、安心して力を発揮できるよう支えていただきたいと思います。
社員同士が支え合い、認め合い、安心して働ける職場は、結果として社員の定着にもつながります。会社は、今いる社員の皆様にも、新しく加わる仲間にも、「この会社で長く働きたい」と思っていただける環境づくりを、これからも大切にしてまいります。
どうか皆様には、これから出会う新しい仲間に対して、あたたかな気持ちで接していただき、ともに助け合いながら、より良い職場をつくっていただければと思います。会社もまた、社員の皆様一人ひとりを大切にしながら、安心して働き続けられる環境づくりに全力で取り組んでまいります。
代表取締役社長〇〇〇〇
休眠美容師再チャレンジ制度規程例
(目的)
第1条 本規程は、一度美容師業務を離れた者(以下「休眠美容師」という。)に対し、再び美容師として就業する機会を提供し、その能力および経験を活かして活躍できる環境を整備するために、休眠美容師再チャレンジ制度(以下「本制度」という。)について必要な事項を定めることを目的とする。
(適用対象者)
第2条 本制度の対象者は、次の各号のいずれにも該当する者とする。
1.美容師免許を有していること。
2.過去に美容師としての実務経験を有していること。
3.結婚、出産、育児、介護その他の事情により美容師業務を離れていた者であること。
4.再び美容師として就業する意欲を有していること。
(制度の基本方針)
第3条 会社は、休眠美容師がこれまでに培った知識および技能を尊重し、その円滑な職場復帰を支援するものとする。
2 会社は、本制度の運用にあたり、対象者の心理的負担の軽減および無理のない職場復帰に配慮するものとする。
(業務内容)
第4条 本制度の対象者が従事する施術メニューは、原則としてカットおよびカラーに限るものとする。
2 会社は、休眠美容師が現場復帰しやすいよう、比較的流行の影響を受けにくい業務範囲を設定し、安心して就業できる環境を整備するものとする。
(就業支援)
第5条 会社は、本制度の対象者に対し、必要に応じて次の支援を行うものとする。
1.現場復帰に必要な技術確認
2.業務手順、接客対応その他店舗運営に関する説明
3.勤務開始前または勤務開始後のフォロー面談
4.その他会社が必要と認める支援
(社内手続き)
第6条 本制度の利用を希望する者は、会社所定の申込書その他必要書類を提出し、会社の承認を受けなければならない。
2 会社は、前項の申込みを受けた場合、保有資格、実務経験、離職期間、希望する勤務条件その他必要事項を確認のうえ、受入れの可否を決定するものとする。
3 所属長または担当部門は、受入れ決定後、勤務開始日、担当業務、勤務場所、指導担当者その他必要事項を本人に通知するものとする。
4 本制度の運用に関する事務は、会社が指定する部門において行うものとする。
(勤務開始後の取扱い)
第7条 本制度の対象者は、会社の就業規則その他関連規程を遵守しなければならない。
2 会社は、勤務開始後の就業状況、技術習得状況その他必要事項を確認し、必要に応じて担当業務の見直しまたは支援内容の調整を行うものとする。
(遵守事項)
第8条 本制度の対象者は、美容師としての法令上の義務および会社の服務規律を遵守し、安全かつ適切に業務を遂行しなければならない。
2 対象者は、顧客情報その他業務上知り得た情報を正当な理由なく第三者に漏らしてはならない。
(制度の見直し)
第9条 会社は、本制度の運用状況、対象者の定着状況その他必要な事情を勘案し、必要に応じて本制度の内容を見直すことがある。
(附則)
第10条 本規程は、令和◯年◯月◯日より施行する。
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休眠美容師の再チャレンジを後押しする取組みは、人材確保の観点から非常に参考になる事例です。一方で、こうした制度を実際に社内へ定着させ、安心して運用していくためには、制度設計だけでなく、日常の労務管理や現場での受け入れ体制まで含めた継続的な対応が欠かせません。
また、人手不足が続くなかでは、休眠美容師をはじめ、多様な人材が安心して働ける環境を整えることが、優秀な人材の確保及び定着にもつながります。採用だけでなく、受け入れ後に長く活躍してもらうための仕組みづくりこそ、これからの企業経営において重要です。
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代表社員 坂本直紀の紹介
坂本 直紀(さかもと なおき)
人事コンサルタント/特定社会保険労務士/中小企業診断士
坂本直紀 社会保険労務士法人 代表社員
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