
【概要】
あるIT企業では、「100%案件選択制」を実施しています。具体的には、次の内容が特徴的です。
1.「100%案件選択制」とは、参画するプロジェクトを自ら決める制度です。
2.この会社では、エンジニア一人ひとりが「自分のやりたいこと」を実現できる環境作りに取り組んでいます。
3.本人のキャリアパス、スキルアップなどの本人の状況に合わせた選択を尊重します。
【意見・感想・解説】
今回は、「100%案件選択制」を取り上げました。
エンジニアが参画する案件を自ら選べる仕組みであり、働く社員にとって大きな魅力があります。
自分の希望やキャリアの方向性に沿って仕事を選べるため、仕事に対する納得感が高まりやすいといえます。
また、社員の希望を尊重する姿勢を会社側が明確に打ち出すことで、採用力や定着率の向上も期待できます。
一方で、このような制度をうまく機能させるためには、本人の希望を尊重するだけでなく、必要に応じて上司や担当者がキャリアパスに関するアドバイスを行うことも大切です。
すなわち、「選べること」だけで終わらせるのではなく、「選んだ後に成長できること」「納得して働き続けられること」まで含めて、ともに設計していく姿勢が重要です。
今回の事例を踏まえ、会社(社長)から社員へのメッセージおよび規程例を作成しました。ご参考ください。
会社から社員へのメッセージ例
社員の皆様へ
当社は、社員一人ひとりが安心して働き、自分らしいキャリアを築いていける会社でありたいと考えています。会社の成長は、日々現場で力を尽くしてくださる皆様の存在によって支えられており、皆様は何より大切な財産です。
このたび当社では、「100%案件選択制」という仕組みを通じて、エンジニア一人ひとりが自らの意思で参画する案件を選べる環境づくりを進めています。これは、単に案件を自由に選べる制度というだけではありません。皆様が自分のやりたいことに向き合い、自身のキャリアパスやスキルアップの方向性に合わせて、納得感を持って働き続けられるようにするための大切な取り組みです。
皆様に長く活躍していただくことは、会社にとって何より大切な願いです。働く中で自分の可能性を広げ、やりがいを感じ、ここで働き続けたいと思っていただけることこそ、私たちが目指す姿です。当社はこれからも、社員を大切にする姿勢を何よりも大事にし、皆様が安心して定着し、将来にわたって力を発揮できる会社づくりに全力で取り組んでまいります。
これからも、ともに成長し、ともに未来を築いていきましょう。
代表取締役社長〇〇〇〇
100%案件選択制度規程例
(目的)
第1条 本規程は、社員が自ら参画する案件を選択できる制度について必要な事項を定め、社員のキャリア形成、能力開発および就業意欲の向上を図ることを目的とする。
(適用対象)
第2条 本規程は、当社に在籍するエンジニア職の社員に適用する。
2.会社は、業務運営上必要がある場合には、対象者の範囲を別途定めることがある。
(制度の定義)
第3条 本規程において「100%案件選択制」とは、社員が会社の提示する案件情報に基づき、本人の意思により参画を希望する案件を選択する制度をいう。
(制度運用の基本方針)
第4条 会社は、社員一人ひとりのやりたいことの実現を支援し、本人のキャリアパス、スキルアップその他の事情に応じた案件選択を尊重する。
2.本制度の運用にあたっては、社員の希望を尊重するとともに、会社の事業運営、顧客要請、案件状況その他の業務上の事情との調和を図るものとする。
(案件情報の提示)
第5条 会社は、社員が案件選択を行うにあたり必要な範囲で、案件の業務内容、必要スキル、勤務地、就業条件、期待役割その他必要な情報を提示する。
2.会社は、提示する案件情報について、社員が適切に判断できるよう、可能な限り正確かつ明確な情報提供に努めるものとする。
(案件選択の原則)
第6条 社員は、自己の希望、経験、能力、今後のキャリア形成等を踏まえ、誠実かつ主体的に参画案件を選択するものとする。
2.社員は、案件選択にあたり、会社が定める期限、手続および方法に従わなければならない。
(会社による確認)
第7条 会社は、社員の選択した案件について、本人の経験、能力、適性、顧客要請その他の事情を踏まえ、参画の可否を確認する。
2.会社は、業務遂行上必要があると認める場合には、社員に対し案件選択の再検討を求め、または別案件を提案することがある。
(キャリア支援)
第8条 会社は、本制度が社員の成長および継続的な就業意欲の向上に資するよう、必要に応じて上司、営業担当者、管理担当者その他の関係者による助言、相談対応およびキャリア形成支援を行うものとする。
2.社員は、案件選択にあたり必要があるときは、上司または会社の指定する担当者へ相談することができる。
(社員の責務)
第9条 社員は、案件を選択するにあたり、自己の希望のみならず、自身の能力、健康状態、就業継続性および担当業務への責任を十分に考慮しなければならない。
2.社員は、選択した案件に参画した後も、継続して知識、技能および業務遂行能力の向上に努めるものとする。
(手続)
第10条 社員が案件選択を希望する場合は、会社の定める方法により、所定の期日までに申出を行わなければならない。
2.会社は、前項の申出内容を確認し、必要に応じて本人面談その他の手続を実施する。
3.会社は、確認結果を踏まえ、参画案件を決定し、本人に通知する。
4.社員は、決定後にやむを得ない事情が生じた場合には、速やかに会社へ申し出なければならない。
(制度運用上の留意事項)
第11条 本制度は、社員の希望を最大限尊重することを基本とするが、特定の案件への参画を会社が必ず保証するものではない。
2.会社は、制度の適正な運用のため必要があると認める場合には、運用方法の見直しを行うことがある。
(規程の所管)
第12条 本規程の所管は、人事担当部門または会社の定める担当部門とする。
(附則)
第13条 本規程は、令和◯年◯月◯日より施行する。
顧問契約サービスのご案内
「100%案件選択制」のように、社員の希望やキャリア形成を尊重する制度は、働きがいの向上や定着率の改善につながる有効な取組みです。
もっとも、こうした制度は、導入すれば自動的に機能するものではありません。制度の趣旨や運用ルールがあいまいなままでは、社員ごとの理解や対応に差が生じ、不公平感や現場の混乱、労務トラブルにつながるおそれがあります。制度導入時にはもちろん、導入後も継続的に内容を点検し、トラブルの予防及び事後に適切かつ迅速な対応を行うことが重要です。
また、エンジニアをはじめとする優秀な人材の確保及び定着を図るうえでも、「社員を大切にする会社」であることを制度面から具体的に示すことが欠かせません。採用時の訴求力を高めるだけでなく、入社後に安心して働き続けられる環境を整備することが、企業の持続的な成長につながります。
顧問契約では、こうした人事労務制度の整備・見直しにあたり、貴社の実情に応じたアドバイスを行い、制度設計、規程整備、運用相談まで一貫してサポートいたします。制度を「作って終わり」にせず、現場で機能する仕組みとして定着させたいとお考えの際は、ぜひご相談ください。
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代表社員 坂本直紀の紹介
坂本 直紀(さかもと なおき)
人事コンサルタント/特定社会保険労務士/中小企業診断士
坂本直紀 社会保険労務士法人 代表社員
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