1.事実関係の迅速かつ正確な確認
ハラスメント発生後、事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認します。必要に応じて、他の事業主に事実関係の確認に協力を求めます。
取り組み例は、以下の通りです。
- 相談窓口の担当者、人事部門又は専門の委員会等が、相談者及び行為者の双方から事実関係を確認します。
- その際、相談者の心身の状況や当該言動か行われた際の受け止めなどその認識にも適切に配慮します。
- また、相談者と行為者の間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分にできないと認められる場合には、第三者からも事実関係を聴取する等の措置を講じます。
ワンポイント解説
相談者の相談内容が事実か否か確認するために、行為者にヒアリングを行う場合があります。注意点としては、相談担当者は原則として、相談者の同意を得てから行為者ヒアリングを行う、ということです。
また、事実関係の際には、あくまでも中立的な立場でかつ客観的に行うことが重要です。
一般的にハラスメントは、力関係が影響しますので、上司が行為者で、部下が被害者となるケースが多いといえます。
例えば、行為者が男性の営業部長で、被害者が女性のパートタイマーのケースで、セクハラの相談を受けたとしましょう。
このときに、行為者をかばったり(例:男性はみんなそのようなものだ)、被害者に非があるような発言(例:君にも隙があったんじゃないか)を相談窓口担当者がすれば、相談者との信頼関係がなくなり、トラブルが深刻化するリスクが生じます。
そして、行為者として名指しされた者を、最初から悪者と決めつけてはなりません。相手の言い分をしっかり聞いて冷静に判断し、適切に対応する必要があります。
以下のページにて、「行為者ヒアリングと第三者ヒアリング」、「事実関係の確認と和解調整」について解説していますので、ぜひご覧ください。
- 参考:相談窓口の対応 ー5.行為者ヒアリングと第三者ヒアリング
- 参考:相談窓口の対応 ー6.事実関係の確認と和解調整
2.被害者に対する適正な配慮措置の実施
職場におけるハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行います。
事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪、被害者の労働条件上の不利益の回復、管理監督者又は事業場内産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応等の措置を講じます。
マタハラ等に関しては、被害者の職場環境の改善又は迅速な制度等の利用に向けての環境整備の措置を講じます。
ワンポイント解説
被害者に対する対応としては、基本的に関係改善を目指すことが理想です。
なぜならば、あくまでも良好な職場環境を形成し、社員一人ひとりが生き生きと働くことが望ましい状況だからです。
従って、行為者が深く反省し、謝罪することで被害者が許してくれるのであれば、再発防止に留意しつつ、関係を改善していくことが良いといえます。
ただ、状況が深刻であり、関係改善が難しい場合は、被害者と行為者を引き離すこともあります。
ハラスメントの場合、メンタル不調になることがありますので、そのまま行為者と同じ職場で被害者が勤務していますと、メンタル不調が悪化することもあります。 また、周囲の社員にも悪影響を及ぼすこともあるためです。
また、被害者がメンタル不調となっている場合は、適切に相談対応し、必要に応じて専門医の受診を促していくことになります。
3.行為者に対する適正な措置の実施
職場でハラスメントが生じた事実が確認できた場合には、速やかに、行為者に対する措置を適正に行います。
就業規則や服務規律等を定めた文書における、「職場におけるハラスメント」に関する規定等に基づき、行為者に必要な懲戒その他の措置を講じます。
ワンポイント解説
ハラスメントが認められた場合、行為者に対して就業規則に基づいて懲戒処分を行うことが考えられます。悪質な場合は、重い懲戒処分を科す場合もあります。
ただ、ハラスメントの内容が軽微であり、行為者が深く反省するとともに被害者へ謝罪をしていたり、被害者も納得し、相手への懲戒処分までは望んでいない等の事情があれば、あえて懲戒処分としない場合もあります。
このように事案に応じて柔軟に対応する必要がありますが、軽微とはいえ、ハラスメントが認められれば、懲戒処分の一歩手前として、厳重注意通知書のような書面を通知することで適切に指導し、ハラスメントの再発防止に努めます。
このとき、適切に指導を行ったという証拠の意味もありますので、口頭よりは書面で対応することが良いでしょう。
4.再発防止措置の実施
改めて職場におけるハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講じます。必要に応じて、他の事業主に再発防止に向けた措置に協力を求めます。なお、職場におけるハラスメントが生じた事実が確認できなかった場合においても、同様の措置を講じます。
- 職場におけるハラスメントを行ってはならない旨の事業主の方針及び職場におけるハラスメントに係る言動を行った者について厳正に対処する旨の方針、妊娠・出産や育児や介護に関する制度が利用できる旨(妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの被害者への対応を行う場合)を、社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に改めて掲載し、配付等を行います。
- 労働者に対して職場におけるハラスメントに関する意識を啓発するための研修、講習等を改めて実施します。
ワンポイント解説
実際にハラスメントが生じた場合は、早めに再発防止を目的とした研修を行うことが有効です。
私がこれまでに実施したハラスメント研修でも、ハラスメントに関するトラブルか生じたことを契機に研修等の依頼を受けるケースもあります。
こうした場合は、行為者を狙い撃ちするようなことはせず、一般的な事例に置き換えて対応することになります。
例えば、セクハラが酒席の場で発生していたとしたら、芸能人やスポーツ選手のトラブル例を紹介することで、トラブルがもたらす大きなリスクを理解してもらうとともに、一般的な酒席でのNG行為を解説し、注意喚起を促します。
酒席でのNG行為については、以下のページを参考にしてください。
- 参考:酒席でのNG行為 ー「性別役割分担意識」と「酒が入ったら要注意」
