ハラスメント対策 解説コーナー

ハラスメントのない職場づくり

経営トップによる、ハラスメント防止のための基本方針

1.社員のモチベーション向上の重要性

一般的に、会社が保有する経営資源には、「ヒト」、「モノ」、「カネ」、「情報」があるといわれています。

これらの経営資源の中で最も重要なものは何かといわれれば、様々な意見があると思いますが、私は「ヒト」と考えています。

なぜならば、会社の保有する資金(「カネ」のこと)を管理したり、実際に運用するのは社員です。もし、問題を発生させる社員ばかりの会社ですと、すぐに会社の資金は減少してしまい、経営に悪影響を及ぼすことになるでしょう。

また、会社の保有する商品を販売したり、設備(いずれも「モノ」のこと)を稼働させるのも社員です。もし、やる気がない社員ばかりですと、売上げは減少し、設備も有効活用することはできないでしょう。

そして、世の中に数ある情報がありますが、これらの情報を適切にフィルタリングし、自社のニーズに適合した情報を活用することが大切になります。そして、こうした作業を行うのも当然社員になります。

さらにいえば、社員の頑張りで会社の業績が良くなれば、優秀な人材の確保・定着につながります。

すなわち、社員が持てる能力を発揮し、日々前向きに業務に精励することが、会社の保有する経営資源が充実するか悪化するかの分かれ目になります。

従って、社員のモチベーションを向上させて、社員の会社への帰属意識を高めることは、とても重要であり、経営者はこのことを強く認識しておかなければなりません。

2.ハラスメント防止に関するトップの方針を示す

このように社員のモチベーションを向上させることは重要ですが、ハラスメントは、このことに関して悪影響を及ぼすことはいうまでもありません。

ハラスメントが発生しているような職場で、社員が生き生きと働くことはありえないからです。

  1. 参考:酒席でのNG行為 ーハラスメントによるリスク

従って、経営者は、「ハラスメントは、社員のモチベーションを低下し、経営に悪影響を及ぼすものである」ことを理解し、ハラスメントを防止するために強い意思表示をすることが求められます。

そのためには、経営者がハラスメント防止のための基本方針を、社員に示すことが有効となります。 以下は、基本方針例を示しています。

〇〇年〇月〇日

社員各位

代表取締役 ○○○○

ハラスメント防止の基本方針

当社は、社員一人ひとりを大切にし、社員の能力の十分な発揮のために、良好な職場環境の形成を目指しています。このような日々の取り組みと皆さんの行動により、高品質なサービスの提供が可能になり、お客様満足度の向上、ひいては当社の業績の拡大につながっています。

最近では、職場でのハラスメントが増加していることをニュースなどで耳にすることがありますが、当社は、社員に危害を及ぼすハラスメントを断じて許すことはできないと考えており、ハラスメントの防止体制を整備する方針です。

勿論、代表取締役である私自身も日々の言動に注意し、ハラスメントを決して行うことはいたしません。従って、役員・管理者・社員全員の皆様も、ハラスメントの未然防止に全力で取り組んでください。

当社は、社員の皆様を守る使命があります。社員一人ひとりが、心を引き締めて、ハラスメントという問題が生じない職場作りに努めましょう。

以 上

この基本方針の特徴は、以下の通りです。

(1)会社の社員に対する思い

冒頭で、「社員一人ひとりを大切にし、社員が能力を十分に発揮できるため、良好な職場環境の形成を目指しています。」とし、最後の方で、「当社は、社員の皆様一人ひとりを守る使命があります。」と述べています。

このように、「会社の社員に対する愛情」を強調することで、社員のハラスメント防止に対する意識を深めます。

(2)社長の強い覚悟

社長自らがハラスメントを決してしないことを明言しています。このように社長自らが、ハラスメントをしない覚悟を述べることは、とても大切です。

ハラスメントは社内の力関係が影響する面もあるため、一歩間違えれば、社長自身がハラスメントの行為者になる可能性もあります。従って、社長自らがハラスメントをしないという決意は、とても重要です。

(3)懲罰的な内容は不記載

例えば、「ハラスメント行為をした社員については、会社は厳しく対応し、懲戒処分に処する」と記載することも考えられます。

しかし、このような懲罰的な内容をここで強く打ち出すことは、社員のモチベーションの観点からは逆効果になることが懸念されます。

まずは、ハラスメント対策は、社員を守るために必要なのだから、全社一丸として取り組むことを熱く述べることが、有効と考えます。

3.具体的に行動で示す

このように「方針」を定めて、全社員に周知することは、とても有効です。

しかし、そうは言いましても、社員は言葉だけでは心に響きませんし、なかなか本気で行動しません。

そのため、経営者が具体的に行動をすることが大事になります。

例えば、以下の内容が挙げられます。

(1)ハラスメント対策の実施

人事部に命じて、ハラスメントに関する現状把握を行い、ハラスメントについて具体的な対策を立案させます。

その場合、もし社内にハラスメント対策委員会を設けるようであれば、社長自身が委員長となり、事務局を人事部として、対応することが考えられます。

(2)話し合い

経営者が、現場の管理者、社員と直接話し合いの場を持つことが重要です。

特に、一般社員は被害者になるケースが多いですから、実際にハラスメントが生じていないか確認する良い機会になります。

また、経営者自身がハラスメントのような言動をしていないか、直接聞いてみるのもよいでしょう。

(3)積極的に学んで情報発信

経営者がハラスメントについて勉強し、学んだことを社内報やメールなどで情報発信・共有を行います。

こうした経営者の姿勢を周囲の社員が見れば、経営者の本気度が伝わってきます。

4.まとめ

ハラスメントを未然防止する上で、経営者の役割は、とても大きいものがあります。

特に、重要なことは、当たり前のことではありますが、経営者自身がハラスメントの行為者にならないことです。

すなわち、いくら経営者が基本方針を作成し周知しても、人事部がハラスメント防止に関する社内規定を設けたり、社員教育をしたとしても、経営者が日々ハラスメント行為をしていたのでは、全く意味をなしません。

最後に、経営者の皆様は、以下のようなパワハラ発言をしていないかどうか、今一度、確認してみてください。

  • 多くの人がいる経営会議で、特定の管理者を罵倒する
  • 管理者を叱責する際、机を叩き、相手に怒鳴る
  • 「部長失格だ!お前の給料で何人、人が雇えるんだ」と部長を痛烈に批判する

仮に、経営者がこのようなことを管理者にしていると、それをされている管理者は、自分の部下に以下のように同じことをしてしまいかねません。

なぜならば、「経営者が自分に対してそのような行為をするのであれば、同じことを俺もしてもいいだろう。」と無意識に感じるためです。

こうした怒りの感情を発すると、その怒りは他の社員に伝染することになります。

従って、「経営者がハラスメントは決して駄目だ」という強い意志を持ち、「自分が決してしてはならない」という強い覚悟が大切です。

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