ハラスメント対策 解説コーナー

カスタマーハラスメントとは

カスハラの定義

2024年11月現在、カスハラの法的定義は設けられていません。 しかしながら今後、労働施策総合推進法改正により、カスハラ対策が企業に義務付けられる方向で調整が進んでいます。

厚生労働省の「雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会報告書」(令和6年8月8日)では、カスハラの定義は、以下の 3つの要素 のいずれの要素を満たすものとして検討すべきとしています。

それでは、この3つの要素について、細かく見ていきましょう。

カスハラの3つの要素およびその内容

[1] 顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行うこと

「顧客」には、今後利用する可能性がある潜在的な顧客も含むと考えられます。

「施設利用者」とは、施設を利用する者をいい、施設の具体例としては、駅、空港、病院、学校、福祉施設、公共施設等が考えられます。

「利害関係者」には、法令上の利害関係だけではなく、施設の近隣住民等事実上の利害関係がある者も含むと考えられます。

[2] 社会通念上相当な範囲を超えた言動であること

顧客、取引先等の権利を濫用し、又は、逸脱したものをいい、社会通念に照らし、当該顧客等の言動の内容が契約内容からして相当性を欠くもの、又は、手段・態様が相当でないものが考えられます。

言動が「社会通念上相当な範囲を超えた言動」か否かの判断については、「言動の内容」及び「手段・態様」に着目し、総合的に判断することが適当とされています。 この場合、「言動の内容」、「手段・態様」の双方が必須条件ではなく、片方のみで社会通念上相当な範囲を超える場合もあり得ることに留意が必要です。

また、社会通念上相当な範囲を超えるかどうかの判断に当たっては、正当な指摘等を受けた事業者(労働者)の側の不適切な対応が端緒となっている場合もあることにも留意する必要があります。

- 言動の内容例

内容例
  • そもそも要求に理由がない又は商品・サービス等と全く関係のない要求
  • 契約等により想定しているサービス等を著しく超える要求
  • 対応が著しく困難な又は対応が不可能な要求
  • 不当な損害賠償請求等
(具体例として考えられるもの)
  1. 契約内容を著しく超える要求
  2. 会社の事業とは関係のない要求(性的なもの、プライバシーに関わるもの等)
  3. 商品やサービス等の内容と無関係である不当な損害賠償要求等

- 手段・態様例

手段・態様例具体例として考えられるもの
●身体的な攻撃(暴行、傷害等)
・殴る、蹴る、叩く
・物を投げつける
・わざとぶつかる
・つばを吐きかける等
●精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉棄損、侮辱、暴言、土下座の強要等)
・「物を壊す」、「殺す」といった発言による脅し
・SNSへの暴露をほのめかした脅し
・インターネット上の投稿(社員の氏名公開等)
・人格を否定するような発言
・土下座の強要
・盗撮等
●威圧的な言動
・大声でオペレーターを責める
・店内で大きな声をあげて周囲を威圧する
・反社会的な言動等
●継続的な、執拗な言動
・頻繁なクレーム
・同じ質問を繰り返し、対応のミスが出たところを責める
・当初の話からのすり替え、揚げ足取り、執拗な責め立て等
●拘束的な言動(不退去、居座り、監禁)
・長時間の拘束
・居座り
・電話等

[3] 労働者の就業環境が害されること

当該言動により、労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなったために能力の発揮に重大な悪影響が生じるなどの当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることとすることが考えられます。

この判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、「同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうか」を基準とすることが適当とされています。 なお、言動の頻度や継続性は考慮するが、強い身体的又は精神的苦痛を与える態様の言動の場合は、1回でも就業環境を害する場合があり得ます。

ワンポイント解説

カスハラについては、上記で説明した通り、顧客からの過剰なクレームや暴言、脅迫などが業務を阻害し、社員に精神的・肉体的な負担を与える行為です。 一方で、適切なクレームに対する不適切な対応が、顧客のカスハラにつながることもあるので注意が必要です。

今一度、以下のような問題が自社の社員に生じていないか確認してみるとよいでしょう。

  • 会社としてのサービスの提供範囲が統一されていない(契約範囲外のサービスの提供や、社員の能力や適性によるばらつき) 。
  • 個人情報の取り扱いに関する知識が不足している(不用意に社員の個人情報を顧客に伝えてしまう) 。
  • 顧客の要望を正確に聞き取れていない。
  • 規則やマナーに関する指導ができていない(時間を守る、身だしなみを整えるなど) 。
  • 意見や要望に対しての返答が不適切である。

その上で、以下の対応を心掛けると良いでしょう。

- カスハラ防止方針の作成と周知

企業として、カスハラに対する明確な防止方針を作成し、企業HPやSNS等を通じて公表します。方針を明示することで、社員に安心感を与えるとともに、カスハラについての会社の毅然とした態度を対外的に示すことになります。

- 相談体制の整備

カスハラに関する相談体制を整備し、社員が気軽に相談できる環境を構築することが大切です。早期に対応することで、ハラスメントの深刻化を防ぎ、社員のストレスを軽減します。

- カスハラ客への法的対応

適切な範囲を超えるハラスメント行為には、法的な対応を視野に入れる必要があります。弁護士や警察などと連携し、法に基づいた対応ができる体制を整備します。

- 対応マニュアルの整備と研修

対応マニュアルを整備し、定期的な研修を行うことで、社員が冷静に対応できるスキルを身につけることができます。マニュアルには具体的な対応例や判断基準を含め、実際の業務に役立つ内容を盛り込むとよいでしょう。

- 担当者の安全確保と心のケア

カスハラ対応の最前線に立つ社員の安全確保と心のケアも重要です。適切なサポート体制を整備することで、社員が安心して業務に従事できる環境を整えます。

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