良好な職場環境の形成
適切な指導とは
部下の成長に結びつける
部下を指導するときは、部下が、これまで以上に能力を向上させ、今後社内で成長することにつなげていくことを意識しなければなりません。
このことを上司の立場の社員は深く認識しておく必要があります。
論理的かつわかりやすく説明する
指導の際に留意すべきことは、指導の内容が、「なぜ必要なのか」、「なぜ重要なのか」、を明確に示すことです。
意味のない業務を押し付けられたのでは、部下は納得しないでしょうし、ただ「やれ」と命令するのでは、部下がその業務を遂行したとしても、期待する行動をとらないことも考えられます。
従って、上司は部下に理想的な行動を明示し、そうした行動をとってもらうよう促します。
同じミスを繰り返す部下に、どう対応するか
たとえ同じミスを繰り返す部下を持ったとしても、上司は、冷静に対応する必要があります。感情に任せて相手に怒鳴ったり、ただ責めるだけでは解決しません。
取るべき行動は、同じミスを繰り返さないように解決策を考え、適切に指導することです。
1.指導のポイント
再三の指導にも関わらず、何度も同じミスを繰り返す社員は、そのミスの出来事や指導された内容、ミスの重大性などについて、時間の経過とともに、忘れてしまっていることが考えられます。
そこで、「記録」と「復習」という行為により、本人の記憶の中に定着させます。
2.前提の確認 ~人は忘れる生き物である
まずは、「人は誰もが忘れる生き物である」という前提を確認します。
心理学を学んだことがある人は、ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスの名前を聞いたことがあると思います。
エビングハウスは、「記憶の忘却」の研究を行った人物で、有名な発表内容として「エビングハウスの忘却曲線」があります。
この実験は、無意味な単語を被験者に覚えさせ、どのような速度で忘却していくかをプロットしたものです。その結果は以下の通りです。
■ エビングハウスの忘却曲線
- 20分後には、42%を忘却し、58%を覚えていた。
- 1時間後には、56%を忘却し、44%を覚えていた。
- 1日後には、74%を忘却し、26%を覚えていた。
- 1週間後には、77%を忘却し、23%を覚えていた。
- 1ヶ月後には 79%を忘却し、21%を覚えていた。
このように、人は時間の経過とともに、ほとんどのことを忘却します。
部下も例外ではありません。
上司が指導したことでも、部下は、そのことについて強く意識していなければ、いずれ忘れてしまいます。
従って、上司の指導内容を部下に強く意識させて、忘れないような工夫をすることが重要です
3.解決策としての、“記録”
前述のとおり、時間が経てば忘れてしまいますので、忘れてもいいように、指導内容を部下に記録させることが重要です。
記録のメリットは、以下の通りです。
- 上司の指導した内容を読み返せる。
- 自分のミスや指導内容を確認できる。
- どうすればミスを防げるか、部下自身も考えるようになる。
- 記録し続けることで、上司の考え方が理解できるようになる。
- 指導内容を、同僚などに正しく速く伝えることができる。
- 「上司の指導内容を忘れるのでは」という不安から解放される。
このように記録を続けることで、上記のようにさまざまな効果が得られます。その結果、仕事のミスを繰り返すということが減少されます。
4.“復習”による、効果の持続
記録したものを復習する必要があります。
記録しても、それを読み返さなければ、残念なことに、また忘れてしまいます。
勿論、記録するときは手を動かしていますので、ある程度は、忘却しないことに対する効果が期待できますが、記録の効果を持続させることを考えると、どうしても復習が必要です。
例えば、私のケースでいけば、色々と資格試験にチャレンジしてきましたが、そこでは勉強したことを何度も復習しました。理由は至って簡単で、復習しなければ忘れてしまうからです。
従って、試験当日で持てる力を発揮できるように、復習を繰り返しました。
ただ、指導のケースで考えると、復習といいましても、それほど大げさに考える必要はないでしょう。
別に記録した内容について試験をするわけではありません。1日に、少し時間をかけて読みかえすことでよいでしょう。それだけでも、十分に持続する効果を得られるはずです。
5.部下の理想的な行動と、気づき
部下の理想的な行動をまとめると、以下のとおりです。上司は、部下が日々の積み重ねで気づきを得るようサポートします。
- 指導内容を“頭でわかったつもり”で何も記録しなければ、すぐに忘れてしまうことを自覚するようになる。
- 上司からの指導内容に関して、部下がその場で記録する習慣が身に着くようになる。
- 自分が記録した上司からの指導内容を、毎日読み返すことを心掛けるようになる。
- その結果、以前注意した仕事に関して同様のミスを繰り返さなくなる。
目指すべきは、Win-Win-Win
ハラスメントは、以下の通り、Lose-Lose-Loseの関係と言えます。
■ Lose-Lose-Lose
| 立場 | 内容 |
|---|---|
| 上司 | 就業規則により懲戒処分(悪質な場合は懲戒解雇)を受ける可能性がある |
| 部下 | ・業務に集中できず、能力の発揮に支障が生じる。 ・メンタルヘルス不調になり、最悪の場合は死に至る可能性がある。 |
| 会社 | ・裁判になれば、会社の安全配慮義務違反、使用者責任により損害賠償責任を問われる可能性がある。 ・刑事上、民事上の責任が追及される |
一方、適切な指導を行うことで、以下の通り、win-win-win(三方よし)の関係を築くことにつながります。
■ Win-Win-Win
| 立場 | 内容 |
|---|---|
| 上司 | 部下の能力向上により、自らの時間が確保でき、本来行うべき重要な業務に専念できる。 |
| 部下 | 上司の適切な指導により、自己の能力が向上し、業務の効率化が図れる。 |
| 会社 | 社内全体の業務効率化により、生産性が向上し、その結果、業績へのプラス効果が期待できる。 |
こうしたwin-win-winの関係を意識して指導を行うことが大切です。
