東京地裁が配送会社に残業代未払い分の支払いを命じた訴訟で、運転手の実際の出退勤時間と記録上の勤務時間の差が問題となった事例
配送会社の元運転手2人が、IDカードの出退勤記録と高速道路の通過記録の差を根拠に、実際の勤務時間管理の不備を説明する漫画
東京地裁は、IDカード上の記録が実際の勤務時間を反映していないとして、配送会社の勤務時間管理が適切ではなかったと判断しました。

【概要】

ある配送会社の元運転手2人が、残業代の一部が未払いとして割増賃金等の支払いを求めた訴訟があり、東京地裁は、制裁金に当たる付加金も含め、計約215万円の支払いを命じました。具体的には、次の内容が特徴的です。

1.2人は都内営業所において、IDカードで出退勤時刻を管理していましたが、「記録上の時間より早く出勤し、遅く帰宅する日もあった」と主張しました。

2.2人が通勤に使っていた高速道路の料金所通過記録と記録上の出退勤時刻に差がありました。

3.このことから、東京地裁は、記録上の時間は必ずしも実際の勤務時間を反映しておらず、営業所の勤務時間の管理が適切ではないとしました。

【意見・感想・解説】

今回は、残業代未払いに関する裁判例を取り上げました。

私が、普段、お客様に残業に関して、お話ししていることの一つに残業時間数は、形式ではなく、実態の把握がとても大切であることがあります。すなわち、今回の裁判のように、ICカードで社員の労働時間を記録していても、実際の労働時間が異なれば、適切に労働時間管理ができていないとみなされるリスクがあるということです。

現在、ワークライフバランスが叫ばれており、過労について厚生労働省が厳しく指導していますので、残業時間の抑制を図る企業も多いと思います。

ただ、一方で、「残業をするな」と社員に命じても、抱えている仕事量が減らなければ、所定労働時間内に業務を完遂できないこともあるでしょう。その場合、やむを得ず、記録上は残業をしていないこととし、実際は残って仕事をする、または自宅に持ち帰って仕事をするといった状態が生じていても不思議ではありません。

これは、いわゆる賃金不払い残業ということになります。その結果、会社では気付かないうちに、こうした残業代不払い、場合によっては過労による健康障害といった問題が発生することが懸念されます。

今一度、社内で管理している労働時間の記録と実態について確認されてみるとよいでしょう。