
【概要】
ある清涼飲料大手の子会社の、管理職97人が未払い残業代などの支払いを求める訴訟、調停を一斉に起こしました。具体的には、次の内容が特徴的です。
1.97人のうち、営業所長及び副所長の2人が計約1,980万円の支払いを求めて大阪地裁に提訴し、他の95人は同様の調停を大阪簡裁に申し立てました。請求総額は、最終的に約4億円に上る見通しです。
2.数年前に同社は賃金規定を改定し、管理職の残業を月40時間とみなして毎月固定額(所長9万5千円、副所長8万千円)を支払う「固定残業代制度」を導入しました。その際、労働基準法などが義務付けている「労働組合からの意見聴取」や、「従業員への周知」は行われませんでした。
3.提訴した2人は管理職に就いて以降、残業代を全く支給されておらず、制度導入後も給与は増えていませんでした。基本給などの一部を40時間分の残業代として付け替えたにすぎないと訴えており、加えて、実際の残業は多い月で85時間あったものの、超過分の賃金も支払われていないという事実が分かりました。
【意見・感想・解説】
今回は、管理職97人による未払い残業代訴訟を取り上げました。
管理職に対し、会社側が勝手に固定残業代を支給することとし、さらには給料そのものが増えていないという問題が原因のようです。このケースでは、以下のとおり2つの問題があります。
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1. 勝手に基本給を引き下げて、固定残業代に付け替えていること
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そもそも基本給は残業代の計算上、分子に算入できる一方で、固定残業代は、算入対象外です。なので、計算上は残業代の単価が引き下がり、不利益変更に該当します。
不利益変更は、労働契約法の観点では原則として個別同意が必要になりますから、勝手に変更することは、問題があると言えます。
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2. 差額を支払わないこと
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固定残業代の計算上、時間外労働40時間で設定していたようです。そのため40時間を超過した場合、残業代の差額支給が必要になります。
今回は85時間の時間外労働が発生している現状であるにもかかわらず、差額支給をしていないということなので、「賃金不払い残業」を指摘されても不思議ではありません。正直、会社側の対応が甘かったと言わざるを得ません。
賃金は、社員にとって重要な労働条件ですから、不利益に変更する場合は慎重に対応するべきだったといえるでしょう。
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今回のような未払い残業代や固定残業代制度をめぐる問題は、制度設計の段階での確認不足や、従業員への説明・周知の不十分さが大きなトラブルにつながる典型例です。特に、賃金規程の変更や固定残業代制度の導入は、労働条件の不利益変更、差額残業代の支払い、管理監督者性の判断など、慎重な検討が求められます。
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坂本 直紀(さかもと なおき)
人事コンサルタント/特定社会保険労務士/中小企業診断士
坂本直紀 社会保険労務士法人 代表社員
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