人事労務解説「出張先の災害の取り扱い」。新幹線での出張、宿泊先での飲酒や体調不良、階段での転倒など、出張中の労災・業務災害を示したイラスト
出張先で病気やケガをした場合の労災認定を解説するイラスト。出張中の体調不良や宿泊先の階段での転倒事故が、業務災害として認められるケースを紹介
出張中の病気や宿泊先での転倒事故などは、特別な私的行為がなければ、業務災害として認められる場合があります。

概要

今回は、出張先での災害について解説します。
出張中は事業場外での業務となり、一見すると事業主の管理下から離れているように思えますが、実際には労働契約に基づいて事業主の指示で仕事をしている点に変わりはありません。
そのため、特別な私的行為がない限り、出張先で発生した災害は一般的に「業務災害」と認められることが多いです。
出張に関する以下の行政通達、Q&Aが、参考になります。

(問)
一般的に急性伝染病流行地に出張した者が、その直後において急性伝染病にかかったときは、業務上の疾病として取り扱ってよろしいか。

(答)
急性伝染病流行地に出張した者が業務の遂行中病原体に汚染されて疾患したことが明らかである場合は、業務上の疾病として取り扱うべきである。(昭和23年8月14日 基収1913号)

(問)
T国に出張したAは帰国後、アメーバ性肝膿瘍にかかった。Aの勤務場所及び住居付近においては同種患者がなく、同病の潜伏期からみて、T国出張中に病原体の付着しているえびを食べたことによるものと医学的に推定されている。なお、この病原体は、東南アジア諸地域から中国大陸方面の川えびによく付着しているものである。海外出張先で風土病にかかった場合は、業務上災害となるか(労災保険法第7条関係)。

(答)
業務上である。(昭和29年8月18日 基収2691号)

また、宿泊先での災害については、以下の裁判例が参考になります。

出張中の宿泊先で夕食中に飲酒後、階段から転落し、死亡した事故でした。この事故について、裁判では、業務起因性が認められると判断しました。
概要は、以下の通りです。

本件事故が発生時点において利光(死亡者本人)が、なんらかの恣意的行為に及んでいたことを示す証拠はない。
(中略)
他の3名が寝入るのを待って自らも就寝すべく、暫時宿泊室の外で時間を過ごし、その間2階をぶらつき、トイレに行ったりなどした。その後、宿泊室に戻ろうとして、いったん本件階段を3階へと昇った。
2階のトイレのサンダルを履いていることに気がついて、2階へ降りようとした際に、足を踏み外して転倒し、本件事故に至ったものと推測する。
(中略)
本件事故は、利光が業務とまったく関連のない私的行為や恣意的行為ないしは業務遂行から逸脱した行為によって自ら招来した事故であるとして、業務起因性を否定すべき事実関係はないというべきである。
そうすると、本件事故については、それが宿泊を伴う業務遂行に随伴ないし関連して発生したものであることが肯認されるところ、業務起因性を否定するに足る事実関係は存しない。
利光の死亡は、労災法上の業務上の事由による死亡にあたるというべきである。
利光の死亡が業務上の事由による死亡に該当しないとして、被控訴人が昭和59年3月31日付でした、労災法に基づく療養補償給付及び遺族補償給付並びに葬祭料を支給しない旨本件処分の取消を求める控訴人の請求は、理由があるから認容すべきである。
(大分労基署長(大分放送)事件 福岡高裁平成5年4月28日)

意見・感想・解説

出張中は、移動や宿泊を含めて業務との関連性が広く認められる場合があります。一方で、業務と無関係な私的行為や恣意的な行動による災害は、労災と認められない可能性があります。事故が起きた際には、発生状況や行動経緯を具体的に確認し、個別に判断することが重要です。

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坂本 直紀(さかもと なおき)
人事コンサルタント/特定社会保険労務士/中小企業診断士
坂本直紀 社会保険労務士法人 代表社員
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