出張命令はいかなる場合も許されるかを解説する人事労務のイラスト
出張命令が権利濫用となり無効になる場合を解説する人事労務の漫画イラスト
出張命令は原則として使用者が命じることができますが、必要性や対象者の選定、不当な動機などによっては、権利濫用として無効となる場合があります。

【概要】

今回は出張命令について解説します。
出張については、基本的には使用者が労働者に命じることができますが、不当な動機での出張命令は認められません。
この点は、出張ではありませんが、「出向」について、労働契約法で以下の通り規定されています。

<労働契約法>
(出向)
第14条 使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。

出張も「その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする」という点は同様と考えます。

この”権利の濫用”については、以下の裁判例が参考になります。
医療法人の従業員に看護婦募集の業務を命じ、1年足らずの間に262日も博多へ出張させたことについて争われた事件です。

[ 裁判の概要 ]
原告が命じられた看護婦募集のための本件出張命令は、その他の職員に命じられた出張命令とその態様を著しく異にし、出張日が間欠的ながらも比較的、連続的で頻繁なものであった。

出張の延べ日数も初めて出張を命じられてから本件懲戒解を受ける前日までの全日数349日中の262日(全体の75パーセント強にあたり原告に多大の犠牲を強いるものである)にのぼっていた。

他方、原告は、被告から看護婦の労働条件に関して予め概略的な指示すらも与えられておらず、その結果、主として各病院を廻って看護婦に声をかける程度のことしかできなかった。

また、弘一理事長らは、成果が全くあがっていない旨の報告書の提出を受けながら、原告に対し、成果をあげるための適切な指導ないし助言をしたことは一度もなかった。

こうした事実に照らすと、弘一理事長らは、少なくとも原告を被告の病院にできるだけ出勤させないでおこうとの意図があった。

看護婦募集の効果のあがることなど余り期待せずに本件出張命令を発していたものと推認できる。

更に、前記ないし認定の事実関係をも考え併せると、被告がかかる出張命令を発した真意としては、原告が長期の病欠後、裁判所や労働委員会に被告を相手方として救済を申し立て被告と抗争した。

こうしたことなどから、弘一理事長らは、原告に対し、嫌悪の情を抱き、これに対する報復をした。

あわよくば、原告が本件出張命令に従うことに嫌気をさして任意退職することを申し出るのを期待して本件出張命令を発していたものと推認することができる。

(医療法人広崎会事件 大阪地裁 1986年11月28日判決)

つまり、出張命令はいかなる場合も許されるわけではない、ということになります。

【意見・感想・解説】

出張命令には業務上の必要性が求められ、対象者の選定や出張の頻度・期間、命令の目的なども重要です。特に、退職を促す目的や報復など、不当な動機による出張命令は権利濫用と判断される可能性があります。会社としては、出張を命じる合理的な理由を説明できるようにしておくことが大切です。

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坂本 直紀(さかもと なおき)
人事コンサルタント/特定社会保険労務士/中小企業診断士
坂本直紀 社会保険労務士法人 代表社員
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