
【概要】
ある化粧品製造会社では、「ワークアップパス」という制度を導入しています。具体的には、次の内容が特徴的です。
1.パート社員として働いている人の希望や家庭状況に応じて、短時間正社員、さらに正社員へと段階的にステップアップできる仕組みを設けています。
2.特に、子育て中は無理のない働き方を選び、子育てが一段落した後には勤務時間や役割を広げながら、長期的なキャリア形成を目指せるよう支援しています。
3.10名いたパートタイム社員のうち、短時間正社員への転換を希望した5名全員が、すでにステップアップを実現。働き続けやすい職場環境づくりの成果が表れています。
【意見・感想・解説】
今回は、「ワークアップパス」という制度を取り上げました。
とても素晴らしい取り組みです。
パート社員から短時間正社員、さらに正社員へと段階的に移行できる仕組みです。
社員にとって、将来の見通しを持ちやすい面があります。
子育てや家庭事情でフルタイム勤務が難しい時期がある方もいると思います。
「今は無理でも、将来は働き方を広げられる」という選択肢があることは、安心感につながります。
離職防止の観点から見ても、非常に効果的な制度といえます。
今回の事例を踏まえ、会社(社長)から社員へのメッセージおよび規程例を作成しました。ご参考ください。
会社から社員へのメッセージ例
社員の皆様へ
日々、それぞれの持ち場で真摯に仕事に向き合ってくださり、誠にありがとうございます。
当社が今日まで歩みを進めてこられたのは、社員一人ひとりの努力、工夫、そして支え合いがあってこそです。会社にとって、皆様はかけがえのない大切な存在です。
仕事を続けていく中では、子育て、介護、家庭の事情、健康面の変化などにより、これまでと同じ働き方を続けることが難しくなる時期があるかもしれません。そのような時に、「辞めるしかない」と思ってしまうのではなく、「今の自分に合った働き方で、これからも会社とつながっていける」と感じてもらえる職場でありたいと考えています。
今回の「ワークアップパス制度」は、その思いから設けるものです。
パート社員として働いている方が、本人の希望や家庭状況、能力、勤務実績に応じて、短時間正社員、さらに正社員へと段階的にステップアップできる道を用意します。今は短い時間で働きたい方も、将来的に勤務時間や役割を広げたい方も、それぞれの状況に合わせて、長く安心して働き続けられるよう支援していきます。
会社は、皆様に無理をしてほしいわけではありません。大切にしたいのは、一人ひとりが自分らしく働きながら、持っている力を十分に発揮できることです。そして、人生の変化に合わせて働き方を見直しながら、当社で長く活躍していただくことです。
働く時間や雇用形態が違っても、会社を支えてくださっている大切な仲間であることに変わりはありません。皆様の経験、責任感、日々の積み重ねは、職場にとって大きな力です。
これからも当社は、社員の皆様の声に耳を傾け、安心して働き続けられる環境づくりに努めてまいります。働き方や将来のキャリアについて不安や希望がある方は、どうか一人で抱え込まず、上司や会社に相談してください。
皆様が「この会社で働き続けたい」「ここで成長していきたい」と思える会社であり続けられるよう、会社としても誠実に取り組んでまいります。
これからも共に支え合い、より良い職場をつくっていきましょう。
代表取締役社長〇〇〇〇
ワークアップパス制度規程例
(目的)
第1条 本規程は、パート社員が本人の希望、家庭状況、能力、勤務実績等に応じて、短時間正社員または正社員へ段階的に転換できる仕組みを定めることにより、社員の継続就業、能力発揮および長期的なキャリア形成を支援することを目的とする。
(定義)
第2条 本規程において「ワークアップパス制度」とは、パート社員が、所定の手続きおよび選考を経て、短時間正社員または正社員へ転換することができる制度をいう。
2 本規程において「パート社員」とは、期間および時間を限定して雇用される社員をいう。
3 本規程において「短時間正社員」とは、正社員に準じた職務と責任を担いながら、所定労働時間を通常の正社員より短く設定して勤務する社員をいう。
4 本規程において「正社員」とは、会社が定める通常の所定労働時間により勤務し、期間の定めなく雇用される社員をいう。
(対象者)
第3条 本制度の対象者は、会社に在籍するパート社員のうち、次の各号のいずれにも該当する者とする。
1.勤続期間が会社の定める基準を満たしていること
2.勤務態度、出勤状況および業務遂行状況が良好であること
3.短時間正社員または正社員への転換を希望していること
4.転換後の職務内容、勤務条件および責任の範囲について理解していること
5.その他会社が必要と認める要件を満たしていること
(制度の内容)
第4条 会社は、対象者の希望、家庭状況、健康状態、育児・介護等の事情、能力、適性および業務上の必要性を総合的に勘案し、次の区分によるステップアップの機会を設ける。
1.パート社員から短時間正社員への転換
2.短時間正社員から正社員への転換
3.パート社員から正社員への転換
2 前項の転換は、本人の希望のみにより当然に認められるものではなく、会社が定める手続きおよび選考を経て決定する。
(短時間正社員への転換)
第5条 パート社員は、子育て、介護、家庭事情その他の事情によりフルタイム勤務が難しい場合であっても、本人が希望し、会社が適当と認めたときは、短時間正社員へ転換することができる。
2 短時間正社員の勤務日数、勤務時間、職務内容、賃金その他の労働条件は、本人の希望および会社の業務上の必要性を踏まえ、個別に定める。
3 短時間正社員への転換後も、本人の希望および勤務状況に応じて、正社員への転換を目指すことができる。
(正社員への転換)
第6条 短時間正社員またはパート社員は、勤務時間や担当業務の拡大を希望し、会社が適当と認めたときは、正社員へ転換することができる。
2 正社員への転換にあたっては、本人の就業意欲、能力、勤務実績、職務適性、勤務可能時間、配置の可能性および会社の人員計画等を総合的に判断する。
3 会社は、正社員への転換を希望する者に対し、必要に応じて面談、業務指導、教育訓練その他の支援を行う。
(申請手続き)
第7条 本制度による転換を希望する者は、会社所定の申請書に必要事項を記入し、所属長を経由して会社に提出しなければならない。
2 申請書には、希望する雇用区分、希望する勤務時間、転換希望時期、家庭状況その他会社が必要と認める事項を記載するものとする。
3 会社は、申請を受け付けた場合、所属長または人事担当者による面談を行い、本人の希望内容、勤務状況、業務適性および転換後の働き方について確認する。
4 申請の受付時期、申請期限および必要書類は、会社が別途定める。
(選考および決定)
第8条 会社は、申請者について、次の事項を総合的に審査し、転換の可否を決定する。
1.勤務成績および勤務態度
2.出勤状況および勤怠の安定性
3.担当業務に関する知識、技能および習熟度
4.転換後に求められる職務遂行能力
5.本人の希望する勤務条件と会社の業務上の必要性との適合性
6.職場内の人員配置および業務運営への影響
7.その他会社が必要と認める事項
2 会社は、必要に応じて面接、実技確認、筆記試験、適性確認その他の方法により選考を行うことができる。
3 会社は、選考結果を本人に通知する。
(転換時の労働条件)
第9条 転換後の労働条件は、転換時に会社が提示し、本人と確認のうえ決定する。
2 転換後の雇用区分、職務内容、勤務場所、勤務日、勤務時間、休憩時間、休日、賃金、賞与、退職金その他の労働条件は、就業規則、賃金規程その他会社の定める規程による。
3 会社は、転換にあたり、必要に応じて労働条件通知書または雇用契約書を交付する。
(キャリア形成支援)
第10条 会社は、本制度の対象者が長期的なキャリア形成を図ることができるよう、必要に応じて教育訓練、業務指導、面談、配置転換その他の支援を行う。
2 会社は、子育て、介護その他の家庭事情により勤務時間に制約がある社員についても、その能力および意欲に応じて活躍の機会を確保するよう努める。
3 社員は、自己の希望する働き方や将来のキャリアについて、会社との面談等を通じて積極的に相談することができる。
(転換後の見直し)
第11条 会社は、転換後の勤務状況、職務遂行状況、本人の家庭状況および業務上の必要性を踏まえ、必要に応じて勤務時間、担当業務、配置その他の勤務条件について見直しを行うことができる。
2 本人は、転換後に家庭状況その他の事情に変更が生じた場合、速やかに会社に申し出るものとする。
3 会社は、本人から申し出があった場合、本人の事情および会社の業務上の必要性を考慮し、必要な対応を検討する。
(不利益取扱いの禁止)
第12条 会社は、本制度の利用を希望したこと、申請したこと、または転換の可否に関する選考を受けたことを理由として、当該社員に対して不利益な取扱いをしてはならない。
2 会社は、本制度を利用しないことを選択した社員についても、その選択を尊重し、不利益な取扱いをしてはならない。
(その他)
第13条 本規程に定めのない事項については、就業規則、賃金規程その他会社の諸規程による。
2 本規程の運用に関し疑義が生じた場合は、会社が個別の事情を踏まえて判断する。
(附則)
第14条 本規程は、令和◯年◯月◯日より施行する。
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一方で、パート社員、短時間正社員、正社員といった複数の雇用区分を設ける場合には、対象者、転換基準、労働条件、賃金、評価、申請手続きなどを明確にしておくことが重要です。制度の内容が曖昧なまま運用されると、社員間の不公平感や説明不足によるトラブルにつながるおそれがあります。
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代表社員 坂本直紀の紹介
坂本 直紀(さかもと なおき)
人事コンサルタント/特定社会保険労務士/中小企業診断士
坂本直紀 社会保険労務士法人 代表社員
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