育児休業をポジティブに捉え直した育児出向制度を示すイラスト。働く母親、赤ちゃん、職場、産後ケア、復職支援を通じて、健康と子育てを支える従業員支援プログラムを表現。
育児休業を「育児出向」と捉え直し、出向中の情報共有、訪問ケア、昇給確約、心身のフォローアップで社員を支える制度を説明する漫画イラスト。
育児出向制度は、育児期間を休業ではなく社員と組織双方にメリットのある期間として位置づけ、情報共有や訪問ケア、昇給確約、メンタル・体調面の支援を行う制度です。

【概要】

ある健康と子育ての従業員支援プログラムの運営会社では、育児出向制度を設けています。具体的には、次の内容が特徴的です。

1.この会社では、”働く人の健康や子育て支援”を牽引する企業の立場として、会社への負担を想起させる「育児休業」という言葉を、もっとポジティブな言葉にできないかと見直しました。

2.「休業」ではなく、組織及び社員自身にメリットの多い「出向」に近いという考えに基づいています。育児休業制度を廃止し、「育児出向」と制度の名称に変更して運用しています。

3.出向に名称が変わったことで、育児出向中及び復職後は、以下の取り組みを行っています。
・昇給の確約
・陣痛中のサポート(社員の7割が助産師の資格を取得)
・訪問ケア(産後ケア)
・出向中の情報共有
・子育て面/メンタル面/体調面のフォローアップ

【意見・感想・解説】

今回は、育児出向制度について、取り上げました。休業だと、いわゆる本人都合で労働義務が免除されているということになります。

一方、出向だと、育児中もいわゆる労働しているのと同じような意味合いとなり、その間、困ったことがあったら積極的にサポートすることにつながります。

復職後のサポートも充実していますので、女性社員にとって、出産、育児の安心感につながります。その結果、優秀な女性社員の定着にもつながります。なかなか興味深い制度です。

今回の事例を踏まえ、会社(社長)から社員へのメッセージおよび規程例を作成しました。ご参考ください。

会社から社員へのメッセージ例

社員の皆様へ

当社は、社員一人ひとりの人生とキャリアの両方を、心から大切にしたいと考えています。仕事に真剣に向き合いながら、出産や育児というかけがえのない時間も大切にしてほしい。その思いは、会社として変わることのない大切な価値観です。

育児は、決して個人だけの問題ではありません。社員が安心して子どもを迎え、育てることができる環境を整えることは、会社の責任でもあります。そして、育児のために一時的に仕事の形が変わったとしても、そのことによって皆様の努力やこれまでの歩みが損なわれることがあってはならないと、私たちは考えています。

そのため当社では、単なる「休む」という発想ではなく、会社とのつながりを保ちながら、安心して育児に向き合える前向きな制度として、育児出向制度を位置づけています。育児に向き合う期間も、皆様の人生にとって大切な成長の時間であり、会社にとってもかけがえのない時間です。

また、育児出向中や復職後においても、昇給の確約、出産時のサポート、訪問ケア、情報共有、子育て面やメンタル面、体調面のフォローアップなど、できる限りの支援を行ってまいります。安心して制度を利用し、安心して職場に戻ってこられる環境を整えることが、会社の役割だと考えています。

当社は、これからも社員を大切にする会社であり続けます。皆様が「この会社で長く働きたい」と思えるような職場づくりを進め、一人ひとりの挑戦と人生を、これからも真摯に支えてまいります。

代表取締役社長〇〇〇〇

育児出向制度規程例

(目的)
第1条 本規程は、社員が育児とキャリアを両立しながら安心して就業を継続できるよう、育児休業に代えて育児出向制度を設け、その運用に関する事項を定めることを目的とする。

(制度の基本方針)
第2条 会社は、働く人の健康や子育て支援を牽引する企業として、育児を理由とする一定期間の就業上の配慮を、単なる休業ではなく、社員の成長及び会社とのつながりを維持する前向きな制度として位置付け、これを「育児出向」と称する。
2 育児出向は、社員が育児に専念する期間においても、会社との継続的な関係を維持し、円滑な復職及び継続的なキャリア形成を図ることを基本方針とする。

(適用対象者)
第3条 本規程は、会社に雇用される社員のうち、育児のために一定期間就業上の配慮を必要とし、会社が育児出向の適用を認めた者に適用する。
2 対象者の範囲、適用条件その他必要な事項は、法令及び個別事情を踏まえ、会社が定めるところによる。

(育児出向の定義)
第4条 育児出向とは、社員が育児を主たる目的として通常業務から一時的に離れる期間について、会社との雇用関係を維持しつつ、必要な支援、情報共有及び復職支援を受ける制度をいう。
2 育児出向期間中の取扱いについては、法令、就業規則その他関連規程との整合を図りながら運用するものとする。

(育児出向期間中の支援)
第5条 会社は、育児出向期間中の社員に対し、次の支援を行う。
1.昇給機会の確保及び昇給の取扱いに関する配慮
2.陣痛時のサポートその他出産時の支援
3.訪問ケアその他産後ケアに関する支援
4.会社の状況、業務情報その他必要事項の共有
5.子育て面、メンタル面及び体調面に関するフォローアップ
6.復職に向けた相談及び調整

(昇給の取扱い)
第6条 会社は、育児出向を利用したことのみを理由として、社員に不利益な昇給上の取扱いをしてはならない。
2 会社は、育児出向中又は復職後の社員について、あらかじめ定めた基準に基づき、昇給の機会を確保するよう努めるものとする。

(出産時及び産後の支援)
第7条 会社は、社員が安心して出産及び育児に臨めるよう、必要に応じて陣痛時の支援体制及び産後の訪問ケア体制を整備するものとする。
2 前項の支援の具体的内容、利用方法及び利用条件は、会社が別に定める。

(情報共有)
第8条 会社は、育児出向期間中の社員に対し、本人の希望及び状況に配慮しつつ、社内情報、制度情報、復職準備に必要な情報その他必要な事項を適切に共有するものとする。
2 情報共有の頻度及び方法は、社員の負担にならないよう配慮して定めるものとする。

(フォローアップ)
第9条 会社は、育児出向中及び復職後の社員に対し、子育て面、メンタル面及び体調面について、継続的な相談対応及びフォローアップを行うものとする。
2 必要に応じて上司、人事担当者、産業保健スタッフその他関係者が連携して支援を行うものとする。

(復職支援)
第10条 会社は、育児出向を終了する社員に対し、円滑な職場復帰を実現するため、業務内容、勤務体制、職場環境その他必要事項について事前に調整を行うものとする。
2 復職後においても、会社は、業務への再適応及び継続就業のために必要な支援を行うものとする。

(利用申請手続)
第11条 育児出向を希望する社員は、会社所定の申請書に必要事項を記載し、原則として会社が指定する期日までに所属長及び人事担当部門へ提出しなければならない。
2 会社は、申請内容を確認のうえ、必要に応じて本人との面談を実施し、利用の可否、期間、支援内容その他必要事項を決定する。
3 社員は、申請内容に変更が生じた場合、速やかに会社へ届け出なければならない。

(社内手続)
第12条 会社は、育児出向の申請を受けたときは、所属部門、人事担当部門その他関係部門が連携し、次の社内手続を行うものとする。
1.申請内容の確認及び承認手続
2.育児出向期間、連絡方法及び支援内容の決定
3.給与、昇給、社会保険その他労務管理上必要な手続
4.業務引継ぎ及び復職準備に関する調整
5.出産時支援、訪問ケア及びフォローアップ体制の整備
6.復職後の配置、業務内容及び勤務上の配慮に関する検討

(禁止事項)
第13条 会社は、社員が育児出向を申請し、又は利用したことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。
2 社員及び関係者は、育児出向に関して知り得た個人情報及びプライバシーに関する事項を、正当な理由なく第三者に開示してはならない。

(委任)
第14条 本規程に定めるもののほか、育児出向制度の運用に関し必要な事項は、会社が別に定める。

(附則)
第15条 本規程は、令和◯年◯月◯日より施行する。

顧問契約サービスのご案内

今回のように、育児とキャリアの両立支援や、復職後を見据えた制度設計は、単に制度を設けるだけではなく、法令との整合性を踏まえながら、実際に現場で機能する仕組みとして整備することが重要です。

人事労務の課題は、問題が起きてから対応するよりも、日頃から制度・運用・社内周知を整えておくことで、トラブルの予防につながります。また、万が一問題が生じた場合でも、早い段階で専門家に相談することで、事後に適切かつ迅速な対応を図ることができます。

さらに、出産・育児・介護・メンタルヘルス対応など、社員が安心して働き続けられる職場環境を整えることは、優秀な人材の確保及び定着のためにも欠かせません。特に中小企業では、制度の充実度や相談できる体制の有無が、採用力や定着率に大きく影響することがあります。

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代表社員 坂本直紀の紹介

坂本 直紀(さかもと なおき)
人事コンサルタント/特定社会保険労務士/中小企業診断士
坂本直紀 社会保険労務士法人 代表社員

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