
概要
ある医療センターは、妊娠中の職員に対して不適切な対応を行ったとして、50代の女性看護管理者を処分しました。
具体的には、次のような対応が問題となりました。
1.深夜勤務の軽減に対する否定的な返答
妊娠した職員が、体力的な負担を理由に「深夜勤務を減らしてほしい」と相談しました。
しかし、女性管理者は、「それって、他の方の深夜勤務が増えるってことですよね」と返答し、申出をやんわりと拒否しました。
2.放射線業務に関する必要な調整を行わなかった
妊娠した職員は、放射線業務から外してもらうよう打診しました。
しかし、女性管理者は、代替要員の配置など、必要な業務調整を行いませんでした。
3.相談窓口への申出と処分
その後、妊娠した職員が相談窓口に申し出ました。
調査の結果、一連の発言や対応は「マタハラに当たる」と認定され、女性管理者は処分を受けました。
意見・感想・解説
今回は、マタハラに該当する発言や対応によって、管理者が処分された事例を取り上げました。
厚生労働省の指針では、「職場における妊娠・出産等に関するハラスメント(マタハラ)」について、主に次のような類型が示されています。
[1]制度等の利用への嫌がらせ型
時間外労働、休日労働、深夜業の制限、母性健康管理措置などの制度について、利用を申し出たり、実際に利用したりしたことに関して、上司などが否定的な言動を行うものです。
[2]状態への嫌がらせ型
女性労働者が妊娠したことや出産したことなどに関して、上司や同僚が否定的な言動を行うものです。
今回、妊娠した職員が「体力的につらいため、深夜勤務を減らしてほしい」と相談したところ、女性管理者は、「それって、他の方の深夜勤務が増えるってことですよね」と返答しました。
この発言は、「深夜勤務の軽減を申し出ると、他の職員に迷惑をかける」という罪悪感を抱かせるおそれがあります。
妊娠した職員に制度の利用をためらわせるような発言であり、指針上の「制度等の利用への嫌がらせ型」に該当する可能性があります。
なお、労働基準法では、妊産婦の深夜業について、次のように定めています。
<労働基準法>
第66条第3項
使用者は、妊産婦が請求した場合においては、深夜業をさせてはならない。
したがって、妊娠した職員から「体力的につらいため、深夜勤務を減らしてほしい」という相談があった場合は、制度の内容を説明したうえで、適切に対応する必要があります。
また、妊娠した職員が「放射線業務から外してほしい」と申し出たにもかかわらず、代替要員の配置などの業務調整を行わなかった点も問題です。
妊娠中の職員から健康や安全に関する申出があった場合は、本人の状況や申出の内容、医師による指導の有無などを確認し、必要に応じて業務内容の変更や担当者の配置などを検討しなければなりません。
周囲の職員への負担を理由に、妊産婦からの申出を否定したり、対応を先送りしたりすることは、マタハラの発生や職場への不信感につながります。
妊産婦の保護とマタハラ防止について、管理者教育などを通じて周知徹底することが重要です。
ハラスメント対策研修のご案内
マタハラを防止するためには、管理職が妊娠・出産に関する制度を正しく理解し、相談を受けた際に適切な言葉と行動で対応することが重要です。
坂本直紀の研修では、マタハラに該当する言動や管理職が行うべき業務調整について、具体的な事例を交えながら分かりやすく解説します。職場の実情に応じたハラスメント対策研修について、ぜひご相談ください。
ハラスメント対策研修例(管理職向け)
(1)ハラスメントによるリスク
(2)セクシュアルハラスメントとは
(3)パワーハラスメントとは
(4)妊娠、出産、育児休業等のハラスメントとは
(5)カスタマーハラスメントとは
(6)ハラスメントと労災
(7)ハラスメントをしないために
(8)怒りの感情コントロール
(9)適切な指導
(10)相談対応上の留意点
(11)ハラスメントを受けた場合
(12)ハラスメント防止規程解説
(13)職場内コミュニケーション
(14)グループワーク
(15)まとめ
一緒にハラスメントのない職場づくりを目指しましょう。
研修講師:坂本直紀の紹介
坂本 直紀(さかもと なおき)
人事コンサルタント/特定社会保険労務士/中小企業診断士
坂本直紀 社会保険労務士法人 代表社員
坂本直紀の詳しいプロフィールはこちら
坂本直紀の研修・セミナー実績はこちら
坂本直紀の書籍執筆実績はこちら
坂本直紀の雑誌執筆実績はこちら
坂本直紀のメディア取材実績はこちら









