
【概要】
ある家庭用洗剤・洗浄剤メーカーでは、自己申告型給与制度を設けています。具体的には、次の内容が特徴的です。
1.社員自身がやろうとしていることや、「こんな価値を提供します。これくらいの給料がふさわしいと思います」という内容を、会社側に提案をします。
2.提案内容が全部通るわけではなく、本人が会社と交渉します。最終的に合意を取ったところで、実施と給与額が決まる制度です。
3.会社としては、この「自己申告型給与制度」は、基本的には「評価」ではなく「投資」と位置づけています。過去の結果に基づいた評価ではなく、未来の価値や提案に対して投資をすることと考えています。
【意見・感想・解説】
今回は、自己申告型給与制度を取り上げました。
社員が会社と交渉し、給与を決定する。会社はこれを「投資」と考えているのは、興味深いものがあります。
直近の人事評価によって昇給額が決まるというのが一般的ですから、給与に投資というのは非常識に思えます。とはいえ、社員が交渉して給与の金額を会社から引き出すのですから、かなり真剣に取り組むことが期待できます。
全社員というよりは、営業職など一部の社員について、こうした取り組みを行っても面白いと思います。参考までに、特許の分野では、優れた発明については多額の報奨金を支払うこともあります。
ですので、一部の社員が自己申告で交渉し、多額の給与を得て成果を促す仕組みを設けることも考えられます。
今回の事例を踏まえ、会社(社長)から社員へのメッセージおよび規程例を作成しました。ご参考ください。
会社から社員へのメッセージ例
社員の皆様へ
いつも会社のために力を尽くしていただき、誠にありがとうございます。
今回導入した「自己申告型給与制度」は、皆さん一人ひとりの可能性を信じ、その未来に投資するという想いから生まれた制度です。従来のように「過去の評価」だけで報いるのではなく、皆さんが「これから会社にどんな価値をもたらしてくれるのか」という点に焦点を当てています。
これは、会社が皆さんの意志や挑戦を真剣に受け止め、共に未来を切り拓いていきたいと考えているからです。自らの考えを持ち、主体的に提案を行い、会社と対話する。そのプロセス自体が、皆さんの成長とやりがいに繋がることを強く願っています。
もちろん、全てがすぐに実現するとは限りませんが、会社は皆さんの声に耳を傾け、前向きに検討し、対話を重ねることをお約束します。
皆さんが安心して働き、自分の力を最大限に発揮できる職場づくりを、これからも共に進めていきましょう。
代表取締役社長〇〇〇〇
自己申告型給与制度規程例
(目的)
第1条 本規程は、社員が自らの業務計画および提供価値を会社に申告し、それに基づく給与を交渉・決定する「自己申告型給与制度」について定めることを目的とする。
(制度の概要)
第2条 本制度は、社員自らが会社に対して、提供する価値および希望する給与額を提案し、会社との交渉を経て合意が得られた場合に、その給与額を適用するものである。
(申告内容)
第3条 社員は、以下の内容を明記した「給与自己申告書」を作成し、所定の期日までに所属長を経由して人事部に提出しなければならない。
1.自己の業務計画および目標
2.会社に提供する価値の内容
3.希望する給与額およびその根拠
(審査および交渉)
第4条 提出された申告内容については、所属長および人事部が審査を行い、必要に応じて本人との面談・交渉を実施する。
2.交渉の結果、会社が提案を承認した場合に限り、希望給与額を適用する。
(給与決定の考え方)
第5条 会社は、自己申告型給与制度による給与決定を「評価」ではなく「投資」として捉え、社員の将来における価値創出に期待して給与を決定する。
(対象者)
第6条 本制度の対象者は、原則として営業職その他会社が指定する職種の社員とする。
(申請時期・頻度)
第7条 自己申告による給与申請は、原則として年1回、会社が定める期日に実施するものとする。
2.ただし、特別な事由がある場合は、会社の承認を得て随時申請することができる。
(適用期間)
第8条 自己申告に基づき決定された給与は、原則として次回の申請期間まで適用される。
(再申告・見直し)
第9条 社員は、申告した内容に重大な変更が生じた場合、再度申告を行うことができる。
2.会社は、経営状況その他やむを得ない事情により、合意済みの給与額を見直すことができる。
(社内手続き)
第10条 自己申告に係る手続きは、以下の通りとする。
1.社員が「給与自己申告書」を作成・提出
2.所属長および人事部による審査・面談
3.会社との交渉・合意
4.合意内容の書面化および本人への通知
5.給与改定の実施
(附則)
第11条 本規程は、令和◯年◯月◯日より施行する。
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代表社員 坂本直紀の紹介
坂本 直紀(さかもと なおき)
人事コンサルタント/特定社会保険労務士/中小企業診断士
坂本直紀 社会保険労務士法人 代表社員
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