
【概要】
ある金属パイプ部品の設計・製造会社では、「資格取得手当」を導入し、多能工化を進めています。具体的には、次の内容が特徴的です。
1.例えば、溶接などの業務に関連する資格を取得すると、月額2,000円を支給します。複数の資格を保有した社員には、その分が加算されます。
2.研修の受講費用についても、会社が負担しています。また、社員が外部講習に参加する日は、出勤日扱いとすることを認めています。
3.資格保有者には、「資格認定カード」を付与します。その上で、対応できる作業工程を社内に掲示することで、”誰がどんなスキルを持っているか”について、社内へ共有を図っています。
【意見・感想・解説】
今回は、資格取得促進により、多能工化を推進している事例を取り上げました。まさに、製造会社ならではの取り組みですね。
ワークライフバランスが進む中、社員の休暇取得促進が注目されていますが、男性の育休促進もその一つです。休暇をとるとなれば、その人が職場から不在となるわけですから、仮に業務が属人化されていた場合、業務に支障が生じてしまいます。
その結果、「なかなか休暇が取れない」という問題が生じます。一つ間違えれば、有給休暇の時季指定義務の5日間もクリアできないリスクも出てきます。
一方、多能工化を普段から進めておけば、仮に休暇を取得しても、代わりの社員がサポートに入ることで、こうした問題の解決につながります。
今回の事例を踏まえ、会社(社長)から社員へのメッセージおよび規程例を作成しました。ご参考ください。
会社から社員へのメッセージ例
社員の皆様へ
いつも日々の業務に真摯に取り組み、会社を支えてくださっていることに、心より感謝申し上げます。
当社は、社員の皆様一人ひとりの努力と成長こそが、会社の力の源であると考えています。だからこそ会社は、社員の皆様を何より大切にし、安心して長く働き続けられる環境を整えていきたいと思っています。
その一環として、当社では資格取得支援制度を設け、業務に関連する資格を取得した方に対して資格手当を支給するとともに、研修費用を会社で負担し、外部講習についても出勤日扱いとしています。これは、社員の皆様の挑戦や成長を、会社としてしっかり応援したいという思いからです。
資格を取得し、できる仕事の幅が広がることは、本人の自信ややりがいにつながるだけでなく、職場全体の支え合いにもつながります。誰かが休暇を取るときも、周囲が自然にフォローし合える体制があれば、安心して休むことができます。こうした環境づくりは、働きやすさを高め、皆様が将来にわたって活躍できる会社づくりに欠かせないものです。
会社は、社員の皆様が技術を身につけ、成長し、その力を存分に発揮できる職場を目指しています。そして、努力して身につけた技能や経験が正当に評価される会社であり続けたいと考えています。
これからも当社は、社員の皆様の声を大切にしながら、働きがいと安心のある職場づくりに努めてまいります。皆様がこの会社でよかったと思えること、そしてこれから先も安心して働き続けたいと思えることが、私たちの何よりの願いです。
今後とも、ともに支え合い、ともに成長しながら、より良い会社を築いていきましょう。
代表取締役社長〇〇〇〇
資格取得支援制度規程例
(目的)
第1条 本規程は、社員の資格取得を促進し、技能向上および多能工化の推進を図るとともに、業務の属人化を防止し、安定した事業運営に資することを目的とする。
(適用対象)
第2条 本規程は、会社に勤務する全社員に適用する。
2.会社は、業務上必要と認める資格について、取得支援および資格手当の支給を行う。
(対象資格)
第3条 資格手当の対象となる資格は、溶接その他会社が業務遂行上必要と認める資格とする。
2.対象資格の種類、内容および支給の可否は、会社が別途定める。
3.新たに対象資格を追加し、または見直す場合は、業務内容、必要性および会社の経営状況を勘案して決定する。
(資格手当の支給)
第4条 社員が前条の対象資格を取得した場合、会社は資格1件につき月額2,000円の資格手当を支給する。
2.社員が複数の対象資格を保有する場合は、その保有数に応じて資格手当を加算して支給する。
3.資格手当の支給開始時期、支給方法および支給条件については、会社が別途定める給与支給の方法による。
(資格手当の申請手続)
第5条 資格手当の支給を受けようとする社員は、資格取得後、所定の申請書に資格証明書類の写しを添付し、会社に申請しなければならない。
2.会社は、提出された書類の内容を確認し、支給の可否を決定する。
3.社員は、資格の更新、失効その他支給要件に変更が生じた場合、速やかに会社へ届け出なければならない。
(研修費用の負担)
第6条 会社は、業務に関連し、かつ会社が必要と認める資格取得または技能向上のための研修について、その受講費用を負担する。
2.会社が負担する費用の範囲は、受講料、教材費その他会社が必要と認める費用とする。
3.費用負担の対象となる研修は、事前に会社の承認を受けたものに限る。
(外部講習の取扱い)
第7条 社員が会社の承認を得て外部講習に参加する場合、当該日は出勤日として取り扱う。
2.前項の場合の労働時間、賃金その他の取扱いについては、就業規則その他の社内規程の定めるところによる。
3.外部講習への参加に当たっては、社員は事前に所定の申請書を提出し、会社の承認を受けなければならない。
(資格認定カードの交付)
第8条 会社は、対象資格を保有する社員に対し、資格認定カードを交付することができる。
2.資格認定カードには、保有資格その他必要な事項を記載し、社員の技能を明確にするものとする。
3.資格認定カードの管理方法および再交付手続については、会社が別途定める。
(技能情報の共有)
第9条 会社は、資格保有者が対応できる作業工程その他必要な技能情報を社内に掲示し、社員間で共有することができる。
2.前項の掲示は、業務の円滑な運営、多能工化の推進および人員配置の適正化を目的として行う。
3.掲示内容の更新が必要となった場合は、会社は速やかに内容を見直すものとする。
(社員の責務)
第10条 社員は、資格取得を通じて自己の技能向上に努めるとともに、取得した知識および技能を業務に活用しなければならない。
2.資格保有者は、会社の指示により、必要に応じて他の社員への指導、助言または技能継承に協力するものとする。
(運用管理)
第11条 本規程の運用管理は、会社の定める担当部門が行う。
2.担当部門は、対象資格、支給状況、受講状況および技能情報の管理を適切に行うものとする。
3.本規程に定めのない事項については、就業規則その他の社内規程に基づき、会社が決定する。
(附則)
第12条 本規程は、令和◯年◯月◯日より施行する。
顧問契約サービスのご案内
資格取得支援や多能工化の推進は、社員の成長を後押しするだけでなく、会社全体の安定した運営にもつながる大切な取り組みです。もっとも、制度を導入した後は、資格手当の運用方法、研修受講時の労務管理、外部講習日の取扱い、技能情報の共有方法など、実務上の検討事項も数多く生じます。
こうした場面で、顧問契約をご活用いただくことで、日頃から人事労務面の課題を整理し、トラブルの予防につなげることができます。また、万が一、制度運用や社員対応に関する問題が生じた場合でも、状況に応じて適切かつ迅速な対応を図ることが可能です。
さらに、資格取得支援や働きやすい職場づくりを継続的に整備することは、社員の安心感や成長実感につながり、結果として優秀な人材の確保及び定着にも結びつきます。人手不足が深刻化する中で、制度を整えるだけでなく、それを継続的に運用できる体制を築くことが、企業経営においてますます重要になっています。
人事労務の課題は、就業規則や各種規程の整備、制度導入時の説明方法、運用上の細かな判断など、専門的な視点が求められる場面が少なくありません。顧問契約では、会社の実情に応じた助言を継続的に受けながら、実務に即した形で制度運用を進めることができます。
顧問契約の内容
- 定期対面による、親身な対応
貴社の人事労務の課題を深く理解し、現場目線で実践的な提案を行います。 - ご相談に対する、迅速な回答
メール・電話・オンラインなど最適な手段でスピーディーに対応します。 - 就業規則の作成・改定
最新法令を踏まえた規程整備でリスクを軽減します。 - 書式や最新情報のご提供
実務でそのまま使えるフォーマットと最新トレンドを随時共有します。
代表社員 坂本直紀の紹介
坂本 直紀(さかもと なおき)
人事コンサルタント/特定社会保険労務士/中小企業診断士
坂本直紀 社会保険労務士法人 代表社員
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