
【概要】
ある証券会社では、「役員通信簿」というユニークな社内制度を導入しています。具体的には、次の内容が特徴的です。
1.「役員通信簿」とは、社長をはじめとする役員に対し、年に一度、新入社員を含めた全社員が評価をつけるというものです。
2.誰がどんな評価をつけたかは本人には特定できません。率直な考えを伝えることができます。
3.役員は、社員の声を取り入れながら経営判断を行うことを狙いとしています。
【意見・感想・解説】
今回は役員通信簿という制度を取り上げました。
通常は、上司が部下の評価を行うのですが、今回は真逆ですね。
社員が役員を、匿名で評価します。この制度ですと、役員もほどよい緊張感が出ていいですね。
もし、役員が社員にひどいパワハラでもしようものなら、おそらく役員の通信簿は低くなると思います。
とはいえ、通信簿を気にし過ぎて、役員が管理職等に指示、命令が遠慮がちになると本末転倒ですので、運用には注意する必要があります。
今回の事例を踏まえ、会社(社長)から社員へのメッセージおよび規程例を作成しました。ご参考ください。
会社から社員へのメッセージ例
社員の皆様へ
いつもそれぞれの持ち場で誠実に業務に取り組み、会社を支えてくださっていることに、心より感謝申し上げます。
このたびの「役員通信簿制度」は、その思いを形にする取り組みの一つです。経営に携わる役員が、社員の皆様から率直な声を受け止め、より良い組織運営につなげていくことを目的としています。会社がより良くなるためには、上からの評価だけではなく、現場で働く皆様の実感や意見にしっかり耳を傾けることが欠かせません。
特に、匿名性を確保したうえで意見を伝えられる仕組みは、安心して本音を届けていただくために重要であると考えています。皆様が日頃感じていること、改善してほしいこと、さらに良くしていくための提案は、会社にとって非常に貴重な声です。会社は、その声を真摯に受け止め、職場環境や組織風土の改善につなげてまいります。
どうか今後も、率直なご意見をお寄せください。皆様の声を大切にしながら、これからも共により良い会社をつくっていきたいと考えています。
代表取締役社長〇〇〇〇
役員通信簿制度規程例
(目的)
第1条 本規程は、社員が役員に対して意見および評価を行う機会を設けることにより、経営の透明性向上、組織運営の改善ならびに役員と社員との信頼関係の構築を図ることを目的とする。
(制度の名称)
第2条 本規程に基づく制度の名称は、「役員通信簿制度」とする。
(対象者)
第3条 本制度における評価対象者は、社長をはじめとする当社の全役員とする。
2 評価実施者は、評価実施日時点に在籍する全社員とし、新入社員を含むものとする。
(実施時期)
第4条 役員通信簿の実施は、原則として毎年1回とする。
2 実施時期は、会社が別途定め、事前に社員へ周知するものとする。
(評価方法)
第5条 評価は、会社が定める所定の様式または電磁的方法により行うものとする。
2 評価項目は、次の各号を基本として会社が定める。
1.経営姿勢
2.社員対応
3.指導力および統率力
4.コンプライアンス意識
5.職場環境改善への姿勢
6.その他会社が必要と認める事項
3 評価にあたっては、必要に応じて自由記述欄を設けることができる。
(匿名性の確保)
第6条 会社は、評価を行った社員個人が特定されないよう、匿名性を確保しなければならない。
2 役員その他の者は、誰がいかなる評価を行ったかについて、個人を特定し、または特定しようとしてはならない。
3 会社は、評価結果の集計、管理および開示にあたり、匿名性保持に必要な措置を講じるものとする。
(評価時の遵守事項)
第7条 社員は、評価にあたり、事実に基づき、誠実かつ公正な意見を記載しなければならない。
2 次の各号に該当する内容を記載してはならない。
1.誹謗中傷または侮辱にあたる内容
2.虚偽の内容
3.業務上の目的を逸脱した私的な不満のみを記載する内容
4.他人のプライバシーを不当に侵害する内容
5.その他会社が不適切と認める内容
(評価結果の取扱い)
第8条 会社は、評価結果を集計し、必要に応じて役員へフィードバックするものとする。
2 評価結果は、役員個人の改善および組織運営の見直しに活用するものとし、懲戒その他の不利益取扱いのみを目的として使用してはならない。
3 会社は、必要に応じて、評価結果の概要または改善方針を社員に周知することができる。
(役員の責務)
第9条 役員は、本制度により示された社員の意見を真摯に受け止め、経営判断、部門運営および職場環境の改善に努めるものとする。
2 役員は、評価結果を過度に意識することにより、必要な指示命令、業務上の判断または管理監督責任の遂行を不当に控えてはならない。
(不利益取扱いの禁止)
第10条 会社および役員は、評価に参加したこと、または評価内容に関連して、社員に対し不利益な取扱いをしてはならない。
2 社員が匿名性のもとで行った正当な意見表明については、これを尊重するものとする。
(社内手続き)
第11条 本制度の運営事務は、人事担当部門または会社が指定する部門が所管する。
2 制度の実施にあたっては、会社は次の手続きを行うものとする。
1.実施時期、評価対象者、評価方法および提出期限の周知
2.評価票の配布または評価システムの案内
3.評価の回収、集計および匿名化確認
4.評価結果の取りまとめおよび役員への報告
5.必要に応じた改善策の検討および社員への周知
3 前項の事務に従事する者は、業務上知り得た情報を適切に管理し、漏えいしてはならない。
(制度の見直し)
第12条 会社は、本制度の運用状況、評価結果の活用状況その他必要な事情を踏まえ、必要に応じて本制度の内容を見直すものとする。
(附則)
第13条 本規程は、令和◯年◯月◯日より施行する。
顧問契約サービスのご案内
役員通信簿制度のように、社員の声を組織運営に生かしていく取り組みは、職場の信頼関係づくりや組織改善に役立つ一方で、制度設計や運用を誤ると、かえって現場の混乱や新たなトラブルにつながることもあります。
そのため、企業実務では、制度を作って終わりにするのではなく、法的な観点と現場対応の両面から、継続的に内容を点検し、適切に運用していくことが重要です。
顧問契約をご利用いただくことで、就業規則や社内制度の整備・見直しを通じて、トラブルの予防につなげることができます。また、万が一問題が発生した場合にも、事後に適切かつ迅速な対応を行いやすくなります。
さらに、社員が安心して働ける環境づくりを進めることは、優秀な人材の確保及び定着にもつながります。人事労務の課題に継続的に向き合う体制を整えることは、企業の持続的な成長にとって大きな意味があります。
制度設計、社内ルールの整備、日々の労務相談まで、実務に即して継続的なサポートをご希望の場合は、ぜひ顧問契約をご活用ください。
顧問契約の内容
- 定期対面による、親身な対応
貴社の人事労務の課題を深く理解し、現場目線で実践的な提案を行います。 - ご相談に対する、迅速な回答
メール・電話・オンラインなど最適な手段でスピーディーに対応します。 - 就業規則の作成・改定
最新法令を踏まえた規程整備でリスクを軽減します。 - 書式や最新情報のご提供
実務でそのまま使えるフォーマットと最新トレンドを随時共有します。
代表社員 坂本直紀の紹介
坂本 直紀(さかもと なおき)
人事コンサルタント/特定社会保険労務士/中小企業診断士
坂本直紀 社会保険労務士法人 代表社員
坂本直紀の詳しいプロフィールはこちら
坂本直紀の研修・セミナー実績はこちら
坂本直紀の書籍執筆実績はこちら
坂本直紀の雑誌執筆実績はこちら
坂本直紀のメディア取材実績はこちら









