
【概要】
ある情報システムコンサルティング会社では、「雰囲気給与」という制度を導入しています。具体的には、次の内容が特徴的です。
1.毎月、社員自らが、自身の貢献度をもとに希望給与額を申請する制度です。
2.顧客やチームにどのような価値を提供できたかを自分自身で振り返り、担当役員と話し合って給与を決めます。
3.具体的には、毎月1回、Zoomで全社員が集まり、雰囲気給与に関する打ち合わせを行います。1か月間の仕事を自己評価したうえで、その場でスプレッドシートに「希望する金額」を入力していきます。
4.フルリモートワークかつスーパーフルフレックス制度のもと、各々が責任感を持って働いています。
【意見・感想・解説】
今回は、「雰囲気給与制度」を取り上げました。
社員が自分自身で給与を決めるという発想は、なかなか大胆ですね。
また、給与査定を年12回(毎月)行う点も、かなり高い頻度だといえます。
自分で希望額を提示する以上、その金額に見合う成果や働き方が求められます。つまり、自由度が高い一方で、相応の責任も伴います。
真面目に取り組む社員が多い組織であれば、各自が成果を意識しますので、業績向上につながる可能性もあります。
ただし、個人の希望額を基本として給与を決める運用は、リスクもあると考えます。中には、制度を悪用しようとする人が出てくる可能性も考えられます。
こうした点を踏まえると、簡単に真似できる制度ではないといえます。
とはいえ、実際にうまく機能しているようですので、新しい給与制度の一つとして参考になる面もあると感じます。
今回の事例を踏まえ、会社(社長)から社員へのメッセージおよび規程例を作成しました。ご参考ください。
会社から社員へのメッセージ例
社員の皆様へ
いつもそれぞれの持ち場で力を尽くし、会社を支えていただいていることに、心より感謝しています。
当社が日々前に進むことができているのは、一人ひとりが責任感を持ち、自ら考え、行動し、仲間やお客様のために価値を生み出してくれているからです。
今回の雰囲気給与制度は、単に給与の決め方を変えるための仕組みではありません。皆様が自分自身の成長や貢献を振り返り、自らの価値を言葉にし、会社と率直に対話できる場をつくるための制度です。会社は、社員の皆様を一方的に評価するのではなく、一人ひとりの思いや努力、成果にしっかり耳を傾け、共に納得感のある形をつくっていきたいと考えています。
私たちは、社員の皆様を何より大切な存在だと考えています。会社の成長は、社員の皆様の成長と安心があってこそ成り立つものです。だからこそ、働きがいだけでなく、「この会社で長く働きたい」「ここでなら自分らしく力を発揮できる」と感じられる環境を整えることが、会社の大切な責任だと考えています。
自由度の高い制度には、信頼と責任が伴います。しかし当社は、皆様の誠実さと主体性を信じています。そして、その信頼に応えてくださる皆様がいるからこそ、このような新しい制度にも挑戦することができます。会社としても、制度を導入して終わりではなく、運用の中で見えてくる課題や皆様の声を丁寧に受け止め、より良い仕組みへと育ててまいります。
どうかこれからも、自分自身の仕事に誇りを持ち、互いを尊重しながら、安心して力を発揮してください。会社はこれからも、社員の皆様一人ひとりの努力と人生に真摯に向き合い、長く安心して働ける職場づくりに全力を尽くしてまいります。
皆様がこの会社で働いてよかったと思えること、その積み重ねこそが、会社にとって何より大きな財産です。これからも共に成長し、より良い未来を築いていきましょう。
代表取締役社長〇〇〇〇
雰囲気給与制度規程例
(目的)
第1条 本規程は、社員が自己の貢献度および提供価値を自ら振り返り、希望給与額を申請し、会社と協議のうえ給与額を決定する雰囲気給与制度について必要な事項を定め、もって社員の主体性、責任感および組織全体の成長を促進することを目的とする。
(適用範囲)
第2条 本規程は、会社に所属する全社員に適用する。
2.会社が必要と認めた場合は、雇用形態、職務内容その他の事情を考慮し、適用対象者の範囲を別に定めることがある。
(制度の基本方針)
第3条 雰囲気給与制度は、社員が自らの業務成果、顧客に対する提供価値、チームへの貢献その他の事情を踏まえ、毎月、希望給与額を申請することを基本とする。
2.本制度は、社員の自主性および自律性を尊重する一方、申請額に見合う成果および責任ある行動を求めるものとする。
3.会社は、社員による申請内容を尊重しつつ、組織運営上の観点、業績、職務内容その他必要な事情を総合的に勘案して給与額を決定する。
(自己評価および申請基準)
第4条 社員は、毎月の給与申請にあたり、少なくとも次の事項を踏まえて自己評価を行わなければならない。
1.顧客に対して提供した価値
2.チームに対する貢献内容
3.担当業務の達成状況および成果
4.勤務態度、責任感および主体的行動
5.その他会社が必要と認める事項
2.社員は、自己評価に基づき、合理的かつ誠実に希望給与額を申請しなければならない。
(給与申請の手続)
第5条 社員は、毎月1回実施される雰囲気給与に関する打合せに参加し、自己評価を行ったうえで、会社の指定するスプレッドシートその他所定の方法により、希望給与額を入力し、申請するものとする。
2.前項の打合せは、原則として指定するオンライン会議システムその他会社が指定する方法により実施する。
3.社員は、申請にあたり、担当業務の実績、成果、課題その他会社が求める事項をあわせて報告しなければならない。
(協議および決定)
第6条 社員が申請した希望給与額については、担当役員が当該社員と協議を行い、その内容を踏まえて会社が決定する。
2.担当役員は、社員の申請理由、成果、能力発揮の状況、組織への影響その他必要な事情を確認し、必要に応じて申請額の修正を求めることができる。
3.最終的な給与額の決定権限は会社に帰属する。
(給与決定の考慮要素)
第7条 会社は、給与額の決定にあたり、次の事項を総合的に考慮する。
1.本人の自己評価の内容
2.顧客満足、成果物の品質その他の業務成果
3.チームワーク、協調性および組織貢献度
4.会社の業績および支払能力
5.職務内容、責任の程度および期待役割
6.その他会社が必要と認める事項
(誠実申請義務)
第8条 社員は、希望給与額の申請にあたり、虚偽、不正または著しく不合理な申請を行ってはならない。
2.会社は、申請内容に不正、不備または説明不足があると認めた場合、再申請、追加説明または必要な資料の提出を求めることができる。
3.前二項に違反した場合は、就業規則その他社内規程に基づき必要な措置を講ずることがある。
(社内手続き)
第9条 雰囲気給与制度の運用に関する社内手続きは、次のとおりとする。
1.社員は、毎月の所定日までに自己評価を整理する。
2.社員は、月例のオンライン打合せに参加し、所定のスプレッドシートに希望給与額を入力する。
3.担当役員は、申請内容を確認し、必要に応じて本人との個別協議を実施する。
4.会社は、協議結果を踏まえ、当月又は翌月の給与額を決定し、所定の方法により本人へ通知する。
5.人事または給与担当部門は、決定内容に基づき給与計算その他必要な事務処理を行う。
6.制度運用上必要な細目は、会社が別に定める。
(見直し)
第10条 会社は、本制度の運用状況、社員の意見、組織への影響その他必要な事情を踏まえ、本規程の内容を適宜見直すことができる。
(附則)
第11条 本規程は、令和◯年◯月◯日より施行する。
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代表社員 坂本直紀の紹介
坂本 直紀(さかもと なおき)
人事コンサルタント/特定社会保険労務士/中小企業診断士
坂本直紀 社会保険労務士法人 代表社員
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