
企業の安全配慮義務
企業には、従業員が安心して働けるように、安全と健康を守る義務(安全配慮義務)が課されています。
これは労働契約法において明記されており、以下の条文に示されています。
<労働契約法 第5条>
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ、労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
つまり、従業員が顧客からカスハラ(カスタマーハラスメント)を受けている、あるいは受ける恐れがある場合、企業は従業員の安全を守るための措置を講じる必要があります。
事例:カスハラが原因で自殺したケース
実際に、カスハラが原因となって深刻な事態に発展した事例があります。
ある住宅メーカーに勤めていた24歳の男性社員が自殺を図り、その後、柏労働基準監督署は「カスハラによる精神障害」として労災を認定しました。
- この社員は入社後、関連会社で注文住宅の営業を担当。新築工事を依頼した顧客に追加費用の説明をしたところ、執拗な叱責を受けるようになりました。休日に電話に出なかった際には、怒鳴られることもありました。
- さらに、携帯電話には「そんなやり方じゃ金なんか払えないぞ!」「すいませんで済むか!」といった暴言の録音が残されていました。現場監督と共に謝罪に訪れた際には、20分以上一方的に責め立てられ、「バカ」といった侮辱も受けました。
- 労災認定のポイントとして、会社側にクレーム対応に関する相談・報告体制が整備されていなかったこと、そして不適切な対応を取っていたことが指摘されました。
企業として取るべき対応
このような深刻な事態を防ぐためには、以下のような取り組みが欠かせません。
- 執拗なクレームを受けている従業員から担当を外し、管理者などに交代させる。
- 他の従業員が被害を受けないよう、状況に応じて配置転換を行う。
- 必要に応じて、弁護士や警察に相談し、法的な観点からも対応する。
- 従業員にメンタル不調の兆しが見られた場合、早期に専門医の受診を勧め、悪化を防ぐ。
まとめ
カスハラは従業員の心身に深刻な影響を与える可能性があります。
企業は、安全配慮義務を果たすために、職場の相談体制を整え、必要に応じて専門機関と連携しながら従業員を守ることが重要です。
次回も「カスハラ防止の原則」について解説していきますので、ぜひご期待ください。








